15日、森林・林業基本計画について2030年迄に国産木材の供給量を2019年対比で約1.4倍の4,200万㎥に増やす閣議決定が遂になされました。

 

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 中国の知的財産権等への懸念を発端とする米国との米中貿易戦争、ポピュリズムの台頭と「環境問題」と「温室効果ガス削減」を掲げる経済覇権闘争の激動の時代と新しい勢力図の構築に向け世界各国がしのぎあう激動の時代。

 

 我が国も2020年10月に菅総理による脱炭素の所信表明で大号令が発布。日本のエネルギー政策の大転換を迎えました。

 

 十年余前の日本某地域。林業業界において、志ある次世代を担う方々が、「先祖代々から続く森林野の維持と管理」に「必要な経済合理性」と、何より「自分らの飯を喰う術」を求めて立ち上がったのがバイオマス発電プロジェクトです。

 

 昭和40年代以降、安価な輸入材に圧された国内木材マーケットへ、一石を投じるべく、間伐された未利用材の「出口戦略」として、海外のビジネスモデルを取り入れた「本邦木質系バイオマス発電ビジネス」は、半世紀近く続いてきた、林業業界の商慣習に新しい風を吹き込んだことは間違いないでしょう。

 

 2021年4月に資源エネルギー庁より出された2050年カーボンニュートラルに向けたエネルギーミックスの中で、木質系バイオマス発電は、世界的な脱炭素と森林伐採への嫌悪感から大体的にはふれられず、風力発電や洋上風力発電、また原子力発電の再稼働に注目が集まりました。

 

 特にプロジェクト進行中である、輸入用PKS及び木質ペレットを燃料とする国内木質バイオマス発電所は安定操業に対する調達リスクが強まり今後の在り方が問われることが予想されます(個人的には、本邦木質バイオマス発電所の基本コンセプトは補助燃料以外、国内未利用材の活用を主体としており、地産地消と炭素循環が当該本邦木質バイオマスビジネスの本質と考えてます)。

 

 また、卒FITに対する課題もあり、売電収入以外のビジネスモデルの議論も並行して活性化されていくことでしょう。

 

 ここにきて、世界的な脱炭素による石炭火力発電所停止・閉鎖の余波は、代替電源確保にあらゆるプレイヤーが火花を散らしおります。国策として、エネルギーミックスの再エネと蓄電池を中心に新たな投資対象して当面注目され続ける分野です。

 

 昨今「ウッドショック」が話題となる背景に、コロナ渦の量的緩和による不動産及び資材への投機側面に加え、住宅ローンによる低金利と在宅勤務増により米国住宅市場の活性化致しました。

 

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 結果、米国建築用木材が2020年比で約3.7倍高騰に影響を与えております。外材は戦後米国住宅市場が活性化される折に度々値上げされてきましたが、日本への影響は略皆無でした。しかし、今回ばかりは、日本低層住宅用土台(実に98%は輸入材)に対して相次ぐ値上げと供給不足に陥っている状況です。今後の国内原木動向が注目されております。

 

 日本の森林面積は国土の約2/3で森林備蓄量は年々増加傾向にあり、1966年対比で約3倍。また、陸地に対する森林面積の割合は68.5%とフィンランドに次ぐ第二位と日本固有の貴重な資源の一つとなっております。林業は山の維持管理であり、木材は維持する為の原資で副産物である発想に基づいております。

 

 植林からの生産、搬出及び間伐、皆伐迄、計画生産で、瞬間的かつ垂直的な需要増には対応できません。需給に見合った計画性と公益性のために「補助金」が業界で重要な位置づけをしめるものと思われますが未来永劫続くものでない事を肝に銘じなければなりません。

 

 冒頭、今回の閣議決定で、長年、補助金と計画生産が柱となっていたビジネスモデルからの脱却は一朝一夕ではいかないことが予想されます。直近の流通の変更や需給のタイト感の変化以上に、現状制度下で、供給量を満たす能力が、供給側に備わっているか否かの問題と、その課題解決が今後の鍵となることでしょう。

 

 もっとこの業界のことをしっていただきたく、随時発信していきたいと思います

 

 

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バイオ満寿男(Bio Masuo) 1985年生

 元環境リサイクルに関わる仕事に従事。日本語には英語で訳せない言葉がいくつも存在します。その中の1つに「幽玄」という言葉があります。物事の趣が奥深くはかりしれないこと。経験や歴史によるところが大きいですが、成熟した業界では、どうしても良い仕事や新しい何かを成し遂げる事に於いて蔑ろにできない概念です。

 先人たちの築かれたものを大事にし、後生につなげられる様、日々奮闘中です。

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