15世紀末から始まったとされる大航海時代。羅針盤や海図などの航海用具が生み出された、この時代はまた、地理上の発見の時代とも言われる。航海を通じてゴムの弾むさまを目撃した最初の欧州人が、新大陸を発見した冒険家、クリストファー・コロンブスだったという。(写真はYahoo画像から引用)

 

 イタリアのジェノバ出身のコロンブスはポルトガルのリスボンで航海術を学ぶ、船乗りとなった。大航海時代の先駆者だったポルトガルの航海者たちがアフリカ大陸の喜望峰回りの東方航路によってインドなどを目指そうとしていていたのに対し、コロンブスは地球が球体であるからには西方に向かったほうが近いと考えていた。

 

 コロンブスは自らのユニークな発想をスペインのイサベル女王に売り込んだ。当時、航海実績でポルトガルに水をあけられていたため、女王はコロンブスのスポンサーとなることを快諾した。コロンブスが西方ルートで1回目の航海に出たのは1492年の夏だった。彼は計4回の航海に乗り出し、今日の西インド諸島、ホンジュラスなどを発見した。 

 

 ところで、中川鶴太郎著『ゴム物語』によると、コロンブスがゴムを発見するのは1493年に出発した2回目の航海のときだった。このとき、彼は現在のプエルトリコやジャマイカに上陸。現地の住民が黒いボール(ゴム)で遊ぶ様子をみて、そのボールがあまりによく弾むのに一驚したという。コロンブスはゴム弾性を目撃した最初の欧州人となったわけだ。

 

 コロンブスが目の当たりにしたボールは弾性ゴムというよりはむしろ、植物性のガム質(ゴム状の樹脂)を固めてつくったボールだったようだ。当時の記録作成者は黒いボールが地面に当たって反発する様子を「まるで生きもののようだ」と記述している。

 

 コロンブスのゴム目撃から約400年後、19世紀に入って発見された新技術である加硫法によるゴム弾性の改良が今日のゴム工業の発展につながっていくことになる。


 

在原次郎

 ジャーナリスト。エネルギーや鉱物、食糧といった資源を切り口に国際政治や世界経済の動向にアプローチするほか、コモディティのマーケットにかかわる歴史、人物などにスポットを当てたリサーチを行なっている。『週刊エコノミスト』などに寄稿。