現在、モータは家電機器や産業機器、自動車、航空機など幅広い分野で使われており、世界の消費電力の50%以上がモータによるとされている。地球温暖化への取り組みではあらゆる産業の低消費電力化が叫ばれている。モータの高効率化はその切り札の一つとされている。ここでは比較低電力動作で使用される車載モータと産業機械モータについて考察する。
まず自動車(車載)モータについて述べる。自動車部品は通常、低コスト、小型、軽量および高信頼性を実現する必要があり、王子に高い効率性を示さなくてはならない。排気物質を減らし、燃料消費を低減することの重要である。様々なモータで動く駆動方式の必要性、効率やシステム設計からくる過酷な要求がアクチュエータ用電子システムの高度な追随性を求める。
DCブラシレスモータ技術の利用度は増大している。のちに述べるように、燃料や冷却水、HVAC(Heat Ventilation and Air Conditioning 暖気喚起空調)、湾曲照明、ヘッドランプ光軸調整など多くの車両機能がDCブラシモータあるいはステッピングモータ技術からDCブラシレスモータ技術に置き換わりつつある。そこで現在世界の自動車で使用される直流モータの需要予測(図表-1市場規模 単位:百万ドル、図表1-2は搭載数量 単位:百万台)を示したものが図表1-1である。現時点では車載用には4種類のDCモータが使用される。最も多く使用されるのはブラシ付き直流(DCブラシモータ)である。
図表1 -1自動車用モータ需要予測:販売高
図表1-2 自動車用モータ需要予測:販売高
続いて直流ブラシレスモータである。機械的に摺動する部分がなくその分寿命が長い。ただし、コストは同じ定格で比較した場合DCブラシモータに比べて高価である。ステッピングモータは比較的小型のモータで制御しやすいことが特徴である。ヘッドランプ角度制御などで主流となっている。トラクションモータはEVカーの駆動用として注目されている。
これらのモータは2020年COVID19の影響で自動車販売が振るわず、前年比マイナスとなったが、2021年以降は徐々に回復基調となる。年平均成長6%程度で推移し2025年には42億個、90,000百万ドルの規模に達すると予想される。先に車載用モータの使用例を述べたが、さらに細かく分類してみよう。大きく分けて自動車の4つのブロックで使用されている。1パワートレインおよびシャーシ 2エアーフロー部 3 ブレーキ部 4パワーシート部である。
2 DC車載モータの種類
1.パワートレインおよびシャーシモータ
① Electronic Throttle Control: 吸気システムにおいて、インテークマニホールドへの吸入空気量を制御するシステム。
② Engine Cooling System : エンジン冷却システム
③ Exhaust Gas Recirculation System: 排気再循環システム
④ Fuel Injection System: 燃料噴射装置
⑤ Power Steering system: 操舵補助機構
⑥ Transmission variable Valve Timing: 可変バルブ機構
2.エアーフロー用モータ
① Blowers :
② Compression:
3.ブレーキモータ
① Anti- Braking System : ABS用モータ
② Electric parking Braking :伝導パーキングブレーキ
③ Electric Vacuum Pump: 伝導真空ポンプ
4.Power Seating 電動パワーシート
① Height Adjuster: 高さ調整
② Length Adjuster: 前後調整
③ Recline r: 背もたれ傾斜角度調整
④ Tilt Adjuster:シート角度調整
⑤ Headrest: ヘッドレスト調整
⑥ Lumbar:ランバーサポート
⑦ Seat belt Pre-tensioner : シートベルト弛み調整
⑧ Seat Heat & Cooling :座席暖房および冷却
➈ Adjustable Headlights:ヘッドライト角度調整
⑩ Door mirrors :ドアミラー角度調整
⑪ Instrument Cluster : メーターパネル調整
⑫ Power Locks : パワーロック用
⑬ Power Roofs : サンルーフ開閉
⑭ Power Windows : パワーウインドウ用
⑮ Windshield Wiper System :ワイパー用
1台の車には平均100個程度のモータが使用されているといわれている。そのうちDCモータに注目し、種類別に分けるとガソリン車にはDCブラシモータ、DCブラシレスモータ、ステッピングモータが、EVにはトラクションモーターと前記の3種類のモータが搭載されている
写真1EPSDCブラシレスモータ(ソース三菱電機Web)
2-2 : DCブラシレスモータ出力別出荷数量
2019年、出力別出荷数では100.W~300Wが最も多く全体の23.8%,次いで50.1~100Wで13.8%である。(図表2-1)
―2019年~23年にかけて出力別DCブラシレスモータの成長予測を図表-2-2に示す。
図表2-1 DCブラシレスモータ出力別出荷数量(単位:1000台)
図表2-2 DCブラシレスモータCAGR(年平均成長予測)
今、車産業全体で最も注目されているEV/HEVパワートレイン用トラクションモーター市場予測を図表-3に示す。2019年までは実績であり、2020年の出荷台数予想は約10,000千台。2021年にはCOVID19のリバウンドで73.3%に達し、2022年以降は50%前後の成長を遂げると予想する。参考までに本分野で市場をけん引しているNIDECの製品ラインアップを図表2-4に示す。
図表2-3 EV/HEV用トラクションモーター市場予測
ソース:OMDIA, NIDEC Web
(椿 匡之)