農業の肥料は窒素、リン酸、カリウムの3要素が必要な事は、小学校で学んだように思います。その昔の事ですが窒素はチリなどの硝石から肥料が製造されておりました。しかし農業で使われる窒素肥料が莫大な量が必要になり硝石だけでは応じきれなくなりました。そこで空気中の窒素を固定化する為の開発が行われ現在のハーバー・ボッシュ法が完成しました。

 

 日本のアンモニア消費量は2019年で約108万トン。このうち約8割を国内生産、約2割をインドネシアとマレーシアからの輸入でまかなっています。日本のアンモニア生産能力は、現在でも国内需要の8割しか有りません。

 

 

グラフ

(出典)貿易統計及び経済産業省生産動態統計年報

 

 

 世界全体のアンモニア生産量は、2019年で約2億トンです。生産国は上位から中国、ロシア、米国、インドが並び、この4ヵ国で世界生産の半分以上を占めています。これらは、アンモニア生産に欠かせない化石燃料を資源として持つ国々です。

 


グラフ

 

 

 アンモニアは、水素ガスと窒素ガスを原料に、高温(400~650度)、高圧(200~400気圧)のもとで合成するハーバー・ボッシュ法で大量生産されている。

 

 天然ガスなどから水素ガスを作る過程で大量のエネルギーを消費する上、温室効果ガスの二酸化炭素を出す。

 

 燃料電池の原料は水素ガスで発電が可能であるが、水素ガスは輸送の問題があり、液化アンモニアの形で輸送が容易になる。更にアンモニアをそのまま発電に使うアイデアも出ている。石炭火力の中でアンモニアを混焼するアイデアで、石炭火力から発生する二酸化炭素が削減できるとのアイデアであるが、このアイデアの最大の課題は、どこで誰が石炭火力の為にアンモニアを製造するのかが最大の課題です。

 

 世界のアンモニアはその生産量の8割が肥料用に使用されており、発電用に生産するには非常に大量のアンモニアが必要となるが、現在の日本の生産能力の数十倍のアンモニアが必要になるなどの試算も存在するが、将来石炭火力は存在しなくなるなどの世界的な流れの中でアンモニアを燃焼に使用する議論には限界があると思われる。

 

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 経産省、資源エネ庁はしかし、このアンモニア発電にご執心である。

 

 関係者に聞いたところ、日本が先行している技術を世界で広げたい、と資源エネ庁は鼻息が荒いようだが、当の国内アンモニア製造メーカー(昭和電工、宇部興産、日産化学、三井化学)はいまひとつ冷めている、と聞く。日本だけで盛り上がるガラパゴス的技術になりはしないか?

 

 資源エネ庁は

 「アンモニアは燃焼してもCO2を排出しない「カーボンフリー」の物質です。将来的には、アンモニアだけをエネルギー源とした発電を視野に入れた技術開発が進められていますが、石炭火力発電に混ぜて燃やす(混焼)ことでも、CO2の排出量を抑えることが可能です」

 

 「現在、石炭火力にアンモニアを20%混焼する実証実験が進められています。もし仮に国内の大手電力会社が保有するすべての石炭火力発電所で20%混焼をおこなえば、CO2排出削減量は約4000万トンになります。さらに今後は、混焼率を向上させる技術を確立させていくとともに、アンモニアだけを燃料として使用する「専焼」も将来的に始まる見通しとなっています。もし、こうした石炭火力がすべてアンモニア専焼の発電所にリプレースされれば、CO2排出削減量は約2億トンになると試算されています」

と主張しており、脱炭素の切り札的存在にアンモニアを置いております。

 

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ammonia_01.html

 

 しかし、その脱炭素に効果あるアンモニアの必要量というのが、20%混焼で2000万トン、専焼では1億トンとされております。日本国内の供給量が100万トンしかないため、その多くを輸入で賄う算段でしょうが、これからしてあまり現実的ではないと思われます。控え目にいっても。

 

 

表

 

 

 アンモニアを輸入してまで発電に使うことがどれだけ脱炭素に寄与できるのでしょうか?海外から日本に運んでくるまでのCO2排出量はどれほどなのか?しかも専用船が必要、貯蔵するタンクも必要。かつ、アンモニアはいまキロ当たり100円、と決してお安くありません。アンモニア発電はコスト的に見合わない、というのが業界の一致した見方です。アンモニアのトップメーカーもアンモニア発電はうまくいかない、持続性がない、とすでにあきらめているのが実情。それでも無理を重ねて国は推進していくのか?LCA(ライフサイクルアセスメント)を基底においた真に科学的な議論が必要だと思います。

 

 

(IRUNIVERSE Katagiri&Tanamachi)