再生ウエーハ、プライムウエーハに続く第3の柱、1500億円市場の1/3、500億円目指す。

 

 

要 約

 ・DGテクノロジーズは創業以来、半導体製造装置用消耗部材を事業の柱として事業展開

 ・工場内の加工プロセスでは竪型MCでの加工工程が多く、超繁忙の中で自動化を加速

 ・DGT事業を拡大、同社第3の柱として1500億円市場の1/3シェア、500億円目指す

 

 

DGテクノロジーズは創業以来、半導体製造装置用消耗部材を事業の柱として事業展開

図 5/7に半導体前工程(WEF:Wafer Fab Equipment)製造装置用消耗部材を手掛けるRSテクノロジーズ(以後RST)の子会社である株式会社DGテクノロジーズ(以後DGT)の工場見学の機会を得た。

 

 DGTは1981年10月、横浜市旭区に宮澤義夫氏が石英ガラス及びシリコン素材の研削・研磨加工を行う株式会社大湘技研として創業した会社。

 

 日本の半導体産業の隆盛とともに業容拡大、その後の過大設備投資と半導体大手の凋落とともに経営が悪化、2016年2月に民事再生法適用申請。2018年に商号をDGT変更、2019年1月にRSTが100%子会社化し企業再生を実現してきた。その結果、売上、利益ともに拡大基調にある(20/12期売上は25億円前後の模様)。現在、従業員数は187名(男子132人、女子55名)となっているが、同社が100%子会社化した時点では100名程度から大幅な人員増となっており、現在も人員増を図っている。

 

 DGTの事業は、半導体製造装置向けの石英ガラス、単結晶・多結晶シリコン製品を中心に、組み込み部品を製造している。主力製品はドライエッチング装置向けのコンタクト電極の石英シールド、シリコン電極、シリコン・石英フォーカスリング/プレートなどであり、買収前と比べて売上は1.5倍程度になっている。

 

 

 同社の特徴はシリコンと石英の両部材を手掛けており、フェローテックや信越石英、東ソー・クォーツ、テクノクオーツなどが石英製品中心、三菱マテリアル、SUMCOなどはシリコン中心と、両方の部材を扱っている企業が少なく、この点で強みを持つ。

 

 

 製品は石英部材が6割、シリコン部材が4割という構成とのことであるが、ユーザーにより仕様が異なることで、構成比が変わることがあるとのこと。なお、同部品群は熱処理や様々なガスなどにさらされるため、消耗品的側面が多く、装置メーカー向けだけでなく半導体メーカーへの直接納入もある。

 

 この点でDGTは、主として製造装置向け中心とし、しかもメインのユーザーはドライエッチング装置向けが多いということで、CVD向けなどは手掛けていないら模様。海外ではWONIK(韓国、石英中心、韓国半導体、装置メーカー向け中心)、WCQ(米国、シリコン、石英、ラムリサーチメインで供給)などの企業があるが、DGTは日本のドライエッチング装置メーカー向けの比率が高いとみられる。

 

 

写真

 

 

図工場内の加工プロセスでは竪型MCでの加工工程が多く、超繁忙の中で自動化を加速

 加工プロセスは石英、シリコン材料の入荷、平面研削、そしてマシニングセンタ(MC)を使った内径、外形加工、ブレート穴あけ加工などを行い、その後、洗浄、出荷となる。部材については中国からの輸入品が多いが、シリコン部材についてはグループ企業の中国GRITEKからの仕入れが多い。中心となるMC加工では、小型竪型MCが多く見られた。具体的にはファナック製やOKK製の装置が多く稼働していた。同社ではMC加工について、自動化、無人化を進めており、その様子を見学することができた。現在、複数の自動化ラインが稼働しているとのことで、省スペース化、無人加工時間の長時間化も進めており、 工場の生産性向上を図っている。

 

 

写真

 

 

 現在、半導体製造装置の受注急増に伴い、積極的にMCの増設を進めており、19/12期に比べ、20/12期は大幅に投資額を増やしている。また受注拡大に伴い、勤務体制も4勤2休体制では対応できなくなっており、2交代制などの対応も含め、増産対応に取り組む状況となっているようで、更なる省人化、無人化が必要となろう。

 

 

図

 

 

DGT事業を拡大、同社第3の柱として1500億円市場の1/3シェア、500億円目指す

図 RSTはDGT事業を、再生ウエーハ、プライムウエーハに続く第3の柱として捉え、加速的な売上拡大を目指している。特にDGTはドライエッチング装置向けに注力、ドライエッチング装置市場拡大に合わせ、現在、同装置向け石英&シリコン消耗部材市場1500億円市場も同様な成長を期待、市場シェア1/3となる500億円の売上を目指す。現状、ドライエッチング装置については2019年シェアでラムリサーチ45%、東京エレクトロン27%、AMAT18%、日立ハイテク5%となっているが、2020年は市場が120億ドルを超えたと推測される。また今後、8%平均で市場が拡大するとの調査会社の観測であるが、さらに強い需要を見ている装置メーカーもある。これは3DNANDフラッシュ投資において、多層化がさらに進展、現在最先端の3.DNANDは112~128層、更に今後も毎年1.3~1.5倍の割合で積層数が増大する見通しで、メモリーホールなどの加工が増加、ウエーハ1枚当たりのエッチング時間が増大するため、ドライエッチング装置の台数を増やすか、もしくは1台当たりのチャンバー数を増加させるしか手がない。

 

 

グラフ

 

 

図 既に3DNAND向けで強いラムリサーチは最新モデル「sense.i」で10チャンバー搭載モデルを発表、東京エレクトロンも新プラットフォーム「Episode UL」では最大12チャンバーまで対応、今後2年間は25~30% 成長が続く見通しにある。エッチング時間の増大、チャンバー搭載数の拡大は消耗品部材の伸びが装置台数の伸びを上回る可能性がある。またシリコンパーツはウエーハと熱膨張率が同一なため、従来使用されていた酸化アルミや酸化イットリウム等を材料としてした部材からの切り替え需要も期待され、DGTでは大きなビジネスチャンスの到来としている。

 

 このような市場環境の中で、RSTでは営業活動の強化を図るとともに、DGTは設備増強をさらに加速させる方向で、21/12期は設備投資計画として新規に12億円の投入を決算説明会資料で開示している。具体的には新たにMC増設を計画しており、早期に更なる増産を目指す。但し、これだけでは需要増に追い付かないのが現状であり、更なる増産に向けた施策として新供給拠点(DGT栗原工場)の開設計画が進みつつある。既ハローワークの4/26付け求人情報にDGTが新規事業所設立を募集目的に、石英ガラス製品、シリコン素材製品製造にかかる製造オペレータ、加工機械への製品セット、中間検査、その他付帯作業など、正社員として10名の人材募集を開始(申し込み掲載期限6/30)している。

 

 DGT栗原工場は東京エレクトロン宮城(宮城県黒川郡大和町)までは67km、1時間の距離しかなく、またRST三本木工場とも46km、40分の距離となっており、顧客対応の面でも最適な事業所となる可能性が高く、同事業だけで売上高120億円~250億円の達成は早いとみられる。

 

 いずれにしても、方永義RST代表取締役社長の新たなチャレンジに期待が膨らむ。

 

 

(IRUNIVERSE MIRAI)