写真 5月3日、欧州委員会は、今後世界各国で新型コロナウィルスワクチン接種が進むことを踏まえ、EU加盟国に対し、EU域内における移動制限の緩和を検討するよう提案を行った。

 

 欧州では、英国、南アフリカ、ブラジルやインドの新型コロナウィルスの変異種の感染が拡大し、多数の国が再三にわたりロックダウンの厳格化を行っており、厳しい状況が続いている。一方で、イギリスなどワクチン接種の加速化に成功している国もあり、今後のワクチン接種のさらなる浸透に期待がかかっている。

 

 現在EUのほとんどの国で厳格な入国制限措置が取られているが、EU域内や域外国におけるワクチン普及を念頭に、欧州委員会はこのたび、EU諸国への不要不急な理由による入国に対する規制を緩和する提案を行った。その際の条件として、感染状況が良好な国からの入国およびEU内で承認されているワクチンの規定量接種を全て完了した人としている。世界規模で観光業が壊滅的な打撃を受けている中、観光大国が多数ある欧州では、夏の長期休暇を前になんとか旅行者受け入れを再開したいところだ。

 

 一方で、欧州委員会は、EUにおける感染状況の進化に伴い、入国が許可される国のリスト作成時に参照される新規感染者の数に関する閾値を引き上げることも検討している。同時に、コロナウィルス変異種に関する厳重な注意も呼びかけた。

 

 また、入国規制の緩和へ向け、欧州委員会は、「緊急ブレーキ・メカニズム」の設置への提案も行った。これは、コロナウィルスの変異種がEU域内への侵入するリスクを最小限にするため、EU全体の協力体制下で調整を行なっていくというものだ。こうしたメカニズムを設置することで、各加盟国が、必要な措置を敏速に施行し、感染状況が悪化した国からの入国の一時制限あるいは厳格な制限を行えるようにする。

 

 

ワクチン接種完了者への旅行許可も

 欧州委員会は、新型コロナウィルスのワクチン接種が完了した人に対し、不要不急な理由によるEUへの旅行許可を提案しており、これは、ワクチン接種が感染網を断つために大きな役割を果たすという「科学的根拠に基づく忠告」を反映するものであるとしている。

 

 具体的な条件としては、少なくとも入国の14日前までに必要な量のコロナウィルスワクチンの接種を終えた人で、そのワクチンはEUで販売が許可されているものとしている。

 

 欧州委員会では、「電子グリーン証明書(the Digital Green Certificate)」の導入を検討しており、早ければ、夏休暇前までに加盟各国での実用化を予定している。この電子証明書は、EU各国政府が発行するもので、ワクチン接種の完了、コロナテストにおける陰性結果、コロナから回復したことなどを証明するのに用いられる。ただし、電子証明の導入には規制やシステム上の準備が必要となるため、委員会は、各国に敏速な対応を促している。

 

 尚、EU域外からのEU域内の国への入国者に対しては、それぞれの国の法律に則った証明書を有効とするとしている。

 

Source:The European Commission

 

 

(Y.SCHANZ)

 

 

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SCHANZ, Yukari

 オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。

 趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。

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