21/3期5.4%増収47.4%営利増に増額着地、今後も戦略製品の伸びでさらなる成長期待。2030年には売上10兆円を目指す

 

株価12655円(4/30) 時価総額75460億円  発行済株596284千株 

PER22/3期DO予(50X)PBR(6.76X)配当DO予100円   配当利回り0.79%

(要約)

・21/3期5.4%増収47.4%営利増で計画比売上680億円、営利50億円上振れ着地

・22/3期、売上高1兆7000億円(5.1%増)営利1800億円(12.5%増)予想も増額期待

・ぶれない成長戦略で2030年度の連結売上10兆円目指し成長加速

 

 

21/3期5.4%増収47.4%営利増で計画比売上680億円、営利50億円上振れ着地

21/3期WEB決算説明会が4/22に開催された。21/3期は売上高1兆6181億円(5.4%増)、営業利益1600億円47.4%増)、税前利益1530億円(45.5%増)当期利益1220億円(2.1倍)となった。1/25の増額修正予想に対し、売上高で620億円上振れし過去最高売上となり、営利でも50億円上振れとなった。コロナ下、家電、IT,ゲーム機などの新規需要を取り込み、営業利益は増収効果とWPR4(経営体質改善)の実効効果で大幅増益に。

 

 

セグメント別では精密小型モータが4436億円(4.6%増)、営利669億円(48.3%増)とHDD用が1440億円(8.4%減)も、その他小型モータがIT用ファンモータ、電動化製品化、ブラシレスモータへの置き換え加速、巣籠もり需要の拡大などで3000億円(12.2%増)となり、MIX良化もあり大幅増益に。車載製品は売上高3581億円(7.5%増)、営利195億円(7.9%減)に。増収要因ではオムロンオートモーティブ買収効果が大きく、営利はトラクションモータ以外の既存品の利益がQ1底に急回復、Q2から2ケタの営業利益率となり、Q4では12.2%まで高まった。なお営利減はトラクションモータの先行投資分で、全体の営利率はQ3で7.3%まで向上した。なおトラクションモータ採用車種は8車種、累計販売で13万台に達した。

 

 

 

 

家電・商業・産業用は売上高6016億円(6.9%増)、営利530億円(56.2%増)。増収はエンブラコ買収効果、欧米向け搬送用ロボット向け、コンプレッサ向けなどの好調、営利では構造改革費用57億円を計上した中で原価改善が急速に進捗、営業利益率は2.8ポイント改善し8.8%、構造改善費用を除くでは10%超を確保した。

 

 

 

機器装置は売上高1506億円(0.6%増)、営利264億円(21.5%増)と、5G関連向けに需要好調な半導体検査装置の増収などが寄与、その他の不振を補い、利益はMIX良化で増益に。電子・光学部門は売上高608億円(0.7%増)、営利63億円(97.3%増)と新製品効果と固定費改善から大幅増益に。

全体を通じ新製品群の増収効果と強力な業務改善効果が寄与し力強い収益拡大となった。

22/3期、売上高1兆7000億円(5.1%増)営利1800億円(12.5%増)予想も増額期待

22/3期会社予想は売上高1兆7000億円(5.1%増)、営業利益1800億円(12.5%増)、税前利益1750億円(14.4%増)、当期利益1400億円(14.8%増)予想とした。現状、自動車生産において、半導体不足などで一時的な生産調整が見込まれることや、コロナ影響などもあり、足元需要は強いものの、慎重にみた数字とのこと。実際にはその他の精密小型モータ、既存車載製品、半導体検査装置等の拡大が見込める機器装置など2桁成長が見込まれ、会社予想を上回る収益が見込める。

 

ぶれない成長戦略で2030年度の連結売上10兆円目指し成長加速

 同社は長期目標として「2030年度連結売上高10兆円」を掲げている。そして現在、コロナ後の新たな「5つの大波」が到来しているとの認識を示した。具体的には5G&サーマルソリューション、脱炭素化、省人化、デジタルデータ爆発、省電力化とコロナ後を認識、この大波の問題解決を事業機会と捉え、10兆円達成を目指すとしている。具体的に「車の電動化」、「ロボット活用の広がり」、「家電製品のブラシレスDC化」、「農業・物流の省人化」、「5G通信に起因する様々な次世代技術」に対し経営資源を集中投下する。

 

 

事業別に「車載」では、「車の電動化」について、世界シェア1位の電動パワステ用、ブレーキ用モータに加え、自動車業界へEV車を核に異業種からの新規参入も含め、業界の構造変化に対応する。特にEVトラクションモータを核に、高付加価値のモジュール製品の提供で飛躍的な拡大を目指す。すでにE-Axleは2025年に250万台販売体制(モーター単体で別途200万台)に向けた生産体制の構築が進んでおり、引き合いでは2025年で300万台を得ている(実際は実需面で300万台には懐疑的な様子)。そして2030年には1000万台体制を見込む。同社はEVの中心となるのは高級車ではなく小型車を念頭に置いており、低価格EVに加え別途ミニEVとして従来の購買層以外にも広がるとし、ミニEVは小型精密モータの範疇で拡大を目指す。かつてTVやカメラで生じた技術革新が世界的な温暖化対策の中で生じていると認識し、EVトラクションモータ事業でHDD成長モデルの再現を目指す。

 

「精密小型モータ」事業では、新ビジネス群の量産立ち上げに注力、現在の売上高4436億円に対し、2025年度1兆円を目指す(新たな事業計画は策定中で早晩、開示を予定)。特に「5G通信に起因する次世代技術」に関しは、膨大なデータ処理に伴う発熱対策において、放熱・冷却などのサーマルマネージメントに対し、HDDで培った超薄型・超小型のFDB(流体動圧軸受け)を利用したファンモータや買収した台湾CCIのべーバーチャンバ等の拡大が見込まれ、ベトナム新工場へ継続的に投資を行い、23/3期には1000億円規模を目指す。

 

またスマホ手振れ補正や振動モータなどに加え、VR,ARやゲーム機用コントローラ、E―スポーツ向けなども大きく伸びるとみられる。加えて、従来からも進化する様々な家電、現在エンジン駆動している様々な機器で電動化、省エネ化、またコードレス駆動化が進展しているとの認識で、小型モータの用途拡大、ブラシモータ、インダクションモータからの代替が加速する見通しを示した。さらに大きな動きとして加わったのがモビリティ関連、ミニEV関連。同社は電動バイク、電動自転車、ミニEVについて精密小型モータで対応する事とした。これはミニEVであれば出力20KWで十分対応可能なこと、2輪では原付で0.6KW以下、125CCクラスは1KW以下、250CCクラスで5~6KWもあれば対応でき、しかも大量生産でコストが下がり、価格競争で他社が脱落していくシナリオを描く。ミニEVについては購買層が全く異なり、年間1~2億台にもなりえる巨大市場創造となることを想定している。一方、既存HDD用についてはサーバー用用途に限り安定的に推移も、全体市場はシュリンクするとしている。

「家電・商業・産業用」では特に産業用において、世界的なCO2削減強化の中で、より高効率なモータへの置き換えが加速する見通し。具体的に農業や上下水道、海洋など、効率的なモータ普及が遅れている分野に注力する。家電、商業向けなどではコンプレッサ用、洗濯機用など、省エネ、省電力化志向の中で、同社モータのシェア拡大が続こう。なお、Eコマース/ロボット関連ではドローン、自動配送ロボット、多関節ロボット向けドライブシステムなども大きく成長が見込まれる。

全体として、同社事業は全事業分野で成長モデルが描かれており、価値創造を生み出す10兆円企業を目指す同社の発展に期待が高まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(IRUNIVERSE MIRAI)