カナダに本拠地を構えるDeepGreen社は、電気自動車(EV)の動力源となる、つまりバッテリーに使用される金属を、多金属の岩石、深海の多金属ノジュールから生産することを目指している興味深い企業のうちの一つだ。

 

 同社がこの方法こそ社会にとって最良の選択肢であるとの信念を持っている一方で、この“海底採掘計画”は、環境保護などの観点から物議も醸しているらしいのだが、この度、“国際海底機関が、EV革命に必要な金属の採掘を急ぐきっかけとなる規制を7月に通過させる準備をしている”との情報が入ってきた。4月25日、Bloomberg紙が報じている。

 

 同紙によれば、環境保護主義者らは、それが脆弱な海洋生態系を危険にさらすことになるばかりでなく、この規制が実施されれば、国際海底機構が新興の鉱業と密接に連携しすぎることになるという点も懸念しているとのことである。

 

 鉱山企業や規制当局らによる分析のための環境データ集めに協力してきた英国リーズ大学の生化学者、Will Homoky氏は、「海洋資源——つまり食料、鉱物、エネルギーなどの獲得と、こうした生息地の保護という、人類の相反する利益を両立させることは、現代我々が直面している大きな課題です」とコメントしている。

 

 同紙によれば、海底資源の採掘自体は、半世紀ほど前からあるアイディアのようだが、これまでの深海採掘の試みはどれも成功しなかったとのこと。EV需要の大幅かつ劇的な増加によってであろうか、近年再び関心が高まっているという。排出量ゼロの自動車を供給する必要性から、焦点が当てられているのは太平洋の地下3キロ地点。例えばコバルトとニッケルに関しては、この地下3キロ地点の海中埋蔵量は、コンゴ民主共和国とインドネシアの埋蔵量を遥かに上回るものだそうである。

 

 DeepGreen社の最高経営責任者であるGerard Barron氏は、現在を「非常に重要な時期」であると表現する。同社が探査した海域には、2億8,000万台分のプラグインカーを駆動できる量のバッテリー・ミネラルが埋蔵されているという。

 

 ただし、環境への影響、海底を採掘した際に発生した土砂がどのように広がるかといった点など、まだ不明点は多く、BMW AG、Alphabet Inc.’s Google、Samsung SDI社などの企業は、先月時点で、こうした採掘が無害であることが研究で証明されるまでは、海底から採掘された金属を購入するつもりはないと発表している。

 

 しかしながら、実際に7月に先述した規制が実施されることになれば、これにより電気自動車革命に必要な金属の採掘ラッシュが始まる可能性があるだろう。今後の動向に注目したい。

 

 

(A.Crnokrak)

 

 

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 豪州シドニー在住。翻訳・執筆のご依頼、シドニーにて簡単な通訳が必要な際などには、是非お声がけください→MIRUの「お問い合わせ」フォーム又はお電話でお問い合わせください。

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