東京などへの3度目の緊急事態宣言を菅義偉首相が23日に発表した2日前のこと。米ニューヨーク市のデブラシオ市長は新型コロナで壊滅的なダメージを受けた観光業や飲食業などを支援するため、大規模な観光誘致キャンペーンを実施することを発表した。一時は米国での新型コロナウイルスの「震源地」となったニューヨーク市だが、1年以上が経過し、コロナ後の経済再生に向けて大きく舵を切っている。いつまでも「どんより」とした日本との決定的な違いは、ワクチン接種の進展だ。接種の現場をリポートする。(写真はすべて筆者が撮影)

 

 ニューヨークは、しゃにむにワクチン接種を進めている。医療機関だけでなく、各地のドラックストア、野球場、大型展示会場などでも接種拠点が設けられ、平日、休日にかかわらず24時間態勢で接種を行っているところもある。

 

 接種会場の一つである大リーグ、ニューヨーク・メッツの本拠地「シティフィールド・スタジアム」(ニューヨーク市フラッシング)を訪れた。

 

 この日は野球の開催日ではなく、午前中ということもあって、球場周辺は人の気配はまばらだったが、いたるところに会場への道案内が貼り出されていた。

 

 

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 最寄り駅である地下鉄の7ライン「メッツ・ウィレッツ・ポイント駅」には英語、スペイン語、中国語、ハングルでワクチン接種場所への案内が貼られていた。

 

 

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 予約の確認書とニューヨーク市在住である身分証を示した後、会場に入り、体調などについての簡単な質問に答えたら、すぐに接種だ。会場はプライバシーへの配慮やスムーズな接種のために、撮影は原則、禁止されている。

 

 上の写真奥が接種場所だ。カーテンなどで仕切られることもない。指示された席に座り、筋肉を少しつままれたと思ったら、あっという間に接種は終わる。その瞬間は思ったより痛くない、という声が大半だ。

 

 

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 注射した場所に絆創膏を貼られた後、15分ほど隣りの部屋で休まされる。接種による体の拒否反応があるかどうかを確かめるためだ。

 

 接種後に説明された副作用は注射場所の痛み、発熱、倦怠感、注射場所の腫れ、注射場所の赤い変色、頭痛、筋肉痛、嘔吐、悪寒、関節痛、リンパ腺の腫れ、体調不良の12項目。接種後の15分で全く異変がなくても、接種翌日にいずれかの症状を訴えるケースが多い。

 

 会場ごとでワクチンの種類が決まっているが、シティフィールド・スタジアムはファイザー製だった。ファイザーとモデルナは約3週間あけて2回接種するが、1回目で副作用がなくても2回目で症状がでる人が米国でも多い。

 

 

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 接種会場の壁には、医療従事者らへの感謝の気持を込めた寄せ書きがびっしりと記されていた。

 

 米CDC(疾病対策センター)が発行するワクチン接種記録カードを発行してもらい、会場を後にすることになる。接種日時とワクチンの種類などを記入されている。いまやお宝カードであるが、米国らしく、平凡な厚紙に手書きでの記録記入だ。汚れないようにするのがいまの米国人の悩みの種である。

 

 ニューヨーク市によると、4月25日現在の18歳以上の接種状況は、少なくとも1回は接種した市民は51%。2回目も終わらせた人は34%だという。

 

 予約がなくても接種ができるようになったが、まだ予約が主流だ。ただ、ダブルブッキングをした友人、知人の枠で接種することができるなど、米国ならではの柔軟さが早い接種につながっている。うまく立ち回った市民が先に接種できてしまうケースも多々あるが、ニューヨーク市は「秩序」よりも「早さ」を重視して接種を進めている。日本人にはできそうにない「いい加減さ」が早い経済再生の原動力になりつつある。

 

 

Taro Yanaka

街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

趣味は世界を車で走ること。