MIRUでは一昨年より赤外線センサシリーズ、複眼市場分析シリーズなどでセンサについて報告してきたが、改めてセンサ市場について最新状況を報告していきたい。第一回は全体概況について。

 

 センサ( Sensor)は、画像、位置、温度、湿度、振動などの物理的な、様々なモノの内外の状態を把握するためのデバイスの一部を指す。世の中のあらゆる「モノ」にセンサが装着され、インターネットにつながる”Internet of Things “(以下IoTと呼ぶ)の進展に伴い、従来インターネットに接続されていなかった分野の機器・装置に接続され、膨大な利用データ(ビッグデータ)の収集・解析を通じ、製造プロセスの改善・効率化や新たな製品・サービス創出へと繋がる仕組みが徐々に出来上がっている。今後本レポートではセンサを「あらゆる情報、エネルギー変化を物理的,化学的手段を持ちて検出する」と定義する。一般的には「電気信号」という形で検出する。

 

 センサと同じような意味で用いられるものにトランスデューサー( Transducer )という言葉がある。このトランスデューサーとは、ある現象を検出しやすい物理量にする素子をいう。例えば、湿度そのものは検出しづらいが、湿度によって伸び縮みする細い糸によって湿度が長さという物理量に変換される。長さの変化を開店する針の先端の位置に変換して「湿度」の計器が出来上がる。この変換した結果の物理量が電気信号である場合、これを特に「センサ:Sensor」と呼ぶ。

 

 

図 1 センサの定義の模式図

図

 

 

 図1に示すようにセンサは「あらゆる情報やエネルギー変化を物理的、化学的、生物学的手段を用いて検出する。その場合「検出素子、デバイス」そのものだけで検出することは少なく、それを必用な検出機構と組み合わせた「センサ機構、センサモジュール」、さらにセンサ情報処理を含めた「センシングシステム、装置」として用いられる。

 

 センサーとは、状態を計測したい対象に関する情報を収集し、機械や人間が扱いやすい信号に置き換える機能を持った装置や素子のことを指す。「検知器」ともいう。人間や生物には視覚や聴覚器官が備わっていて、それらによって知覚した情報を脳で分析して判断し、対応している。同様に、機械も制御や処理をするための情報をセンサから得ることができる。機械がセンサによって得られる情報には温度、湿度、速度、加速度、磁力など多種多様な種類があり、人間の五感よりも幅広く精緻といえる。

 

 

1 IoTで活用されるセンサで実現できること

 IoTではどのようなセンサが実用されているのか、具体例を挙げて説明する。

 

1 温度センサ:温度センサは、対象物や対象空間の温度を計測する。食品や食材を適切な温度を保ち管理する。機械の異常な温度上昇を監視するなど、恩でセンサの活用範囲は多岐にわたる。温度センサーには次のようなものがある。

 a) サーミスタ, b) 熱電対、c)測温抵抗体,  d) バイメタル,  e)圧力温度計、f) 放射温度計など多種多様なセンサが存在する。

 

2 湿度センサ:湿度センサは、大気中の任意の空間内に含まれる水蒸気の比率を計測する。エアコン、冷蔵庫、空気清浄機などの身近なものから、ビルやホテルの空調管理、工場内の特定個所の湿度調整に使用されるものなどがある。電子式の湿度センサには抵抗式と容量式の2種類があり、いずれも乾湿材料とよばれる物質を用いて、ドライ、ウエットの度合いを電気信号に変換する。 


3 加速度センサ: 加速度センサは、単位時間当たりの速度を表す加速度を測定する。加速度を測定すると、物体の傾きや振動などの情報を計測できる。加速度センサにも多くの種類があり、MEMS( Micro Electro mechanical System)と呼ばれる技術を用いた静電容量式など知られている。

 

4 GPSセンサ:GPSセンサは、全世界的な位置測定システムであるGPSを使ったセンサである。スマートフォンにも搭載されている。1990年代に車載用ナビゲーションシステムに応用され一世を風靡した。GPSは約2万キロメートル上空を周回しているGPS衛星、地上管制、GPS受信機という3つの要素によって対象の位置を測定する。

 

5 ジャイロセンサ:ジャイロセンサは、角度を検出するセンサ。加速度センサとともに、慣性センサの一種でもある。ジャイロセンサは、加速でセンサでは計測できない、開店する動きを検出することができる。スマートフォンやデジタルカメラの手振れ補正用などにも使用されている。

 

6 圧力センサ:圧力センサは、圧力を検知するセンサである。シリコンチップの隔膜に加わる圧力を膜の変形として検出し、電気信号に変換するといった原理で圧力を計測する。給湯器、エアコン、洗濯機、食器洗い、空圧計・水圧計・油圧計など様々な用途がある。

 

7 光センサ:光センサは光を検知するセンサ。紫外線、可視光、赤外線など対象とする光の種類別にセンサが存在する。物質に光を当てると光電効果と呼ばれる電子の変化が起こる。光センサはこの香典変化を利用して光を検知する。もっとも単純な光センサは、光が遮断されたかどうかを検知するだけものもで、自動ドアの人感センサなどが該当する。

 

8 イメージセンサ:イメージセンサは、光を電気信号に変換し、像を取得する。イメージセンサは高度な光センサでもある。その代表例はデジタルカメラやデジタルビデオカメラである。デジカメはCMOSやCCDといった撮像素子を介して光を電気信号に変換し、画像を得る。

 

9 距離センサ:距離センサは、対象物までの距離を測る。距離センサには光学、電波、超音波を利用する3種類がある。原理としては測定対象物に光などを照射し、反射されて戻ってきた光を評価し、距離に換算して出力する。

 

10 振動センサ:振動センサは、振動を検知するセンサである。振動センサは対象とする物体の変位、速度、加速度を測定できる。振動変位量を微分すれば速度を検出できる。

 

11 音センサ(音響センサ):音センサは、音の振動を検知するセンサーであり、音の検出を行うセンサはマイクロホンと呼ばれる、音の大きさや音の高さなどを判別できる。声をテキストに変更する音声認識技術などと組み合わせて、音声入力や音声操作などに利用されている。

 

 次回は①~⑪に挙げたセンサの物理的/化学的情報、検出信号等について考察する。

 

ソース:

 ・ちゅうごく産業創造センター

 ・日立ソリューションズクリエート Web

 

 

(椿 匡之)