豪州廃棄物回収企業再大手のCleanaway Waste Management社が仏Suez社の豪州法人の買収を計画しており交渉を重ねているというニュースが、3月4日、豪ファイナンシャル・レヴュー(AFR)紙にて初めて報道された。しかしながら現在、フランスの世界的大手廃棄物管理企業Veolia社は、この買収が実行された場合フランスの買収法に違反することになるとして、法的にブラックホールに陥るであろうという忠告を行っている。

 

 Cleanaway社が計画している今回の買収は、業界内部によれば20億ドル以上の規模であるという。AFRの報道には、この買収は非常に大きな一手で、実現すれば同社の収入と収益を50パーセントほども増加させることが可能であろうと書かれている。

 

 Cleanaway社は、「Suez社が自社の事業売却を進める場合、その豪州廃棄物管理資産の買収の可能性についてSuez社へ興味を示した」と当初ASX内の声明で述べている。ただし同時に、「Cleanaway社は、様々な事実に対する潜在的な機会を評価します。それが同社の戦略に合致し、株主への価値を生み出す場合にのみ、買収を進めるでしょう」と、取引が実現する保証はないことも強調している。

 

 仏Veolia社がここに待ったをかけたことが報道されたのは、3月9日。Veolia社は昨年10月、Suez社の株式の29.9パーセントを取得しているが、豪州事業は、どうやらVeolia社にとっても大事な戦略的資産であるようだ。Veolia社COOのEstelle Brachlianoff氏は、Cleanaway社による買収計画のニュースに「正直なところ、我が社は大変驚いた」とコメントしており、苛立つ様子が報道されている。

 

 具体的にVeolia社は、Brachlianoff氏がAFRに明らかにしたところによれば、法的な状況の説明とともに、Cleanaway社がSuez社豪州事業をSuezのその他グローバル事業から引き離そうとする場合に陥る可能性のある問題点について説明する書面をすでにClenaway社側へ送ったという。また、Veolia社豪州部門のトップRichard Kirkman氏は、Cleanaway社の株主らに向けても、Suez社が豪州現地事業を売却することはフランスの買収法に違反するとして、“法的な対決の可能性”に注意するよう警告を発している。

 

 さらにBrachlianoff氏は、この買収計画には、フランス買収法違反に加えてもう1点別の問題点があることも指摘。それは、豪州廃棄物処理業界において最大手のCleanaway社がSuez豪州部門を統合した場合、国内市場での存在が大きくなりすぎるゆえ、競争・消費者委員会から非難を浴びる可能性があるという点だ。実際に豪州競争・消費者委員会(ACCC)は、Cleanawa社とSuez社の間で取引が成立した場合、競争への影響を評価するために全面的な公開審査を開始すると発表している。

 

 CCZ EquitiesのアナリストであるRaju Ahmed氏も、3月4日時点の報道で、この買収が行われた場合には、豪州国内での市場シェアが50パーセントを超える可能性が高く、競争上の懸念を意味すると述べている。ただし同氏は同時に、より地域的なレベルで競争する傾向がある豪州市場の特徴も指摘。競争問題を国内市場シェアの大きさで評価、判断することは、誤解を招く恐れもあるとした。

 

 最新情報としては、Cleanaway社は3月9日、Suez社豪州部門との間の潜在的な取引をめぐるVeolia社からの法的警告に怯えてはおらず、自社の行動は適切であり、常に法律を遵守しているとする反論を展開した。最高執行責任者のBrendan Gill氏は、我々は権利と義務を十分に理解しているとして、法的文書を受けて方針を変更することはないと述べている。

 

 Veolia社とCleanaway社の主張が食い違う中、Suez社はこうした両社の言い分にどう反応するのだろうか。買収計画の行く末に注目である。

 

 

(A.Crnokrak)

 

 

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 豪州シドニー在住。翻訳・執筆のご依頼、シドニーにて簡単な通訳が必要な際などには、是非お声がけください→MIRUの「お問い合わせ」フォーム又はお電話でお問い合わせください。

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