「カーボンゼロ時代のアルミニウム生産、生活の中でのグリーンアルミVol.11」からの続き
2021年1月、HydroのExtruded Solutionsの責任者でありPresident & Chief Executive OfficerであるEgil Hogna氏は、グリーンアルミの今後の可能性について2022年中には2倍の売り上げを見込むとするコメントを発表した。
更に「2021年にはCircalの販売量は40,000〜50,000トンと予測され、その後の将来性も非常に高い」とした。
北欧デザインとして、世界的に人気を誇る建築分野についてであるが、Hydroはサッシ、窓、ドアの製造に年間約8万トンのアルミニウムを使用している。2020年に1万トンのCircalがそれら押出類用途で使用されたが、Hogna氏によると「2021年中にその量は2倍になる」という。「Circalのコストは標準のアルミニウムよりも10〜20%高くなるものの、他の材料や労力を勘案すると、通常の提示価格より2〜3%高くなるだけに留まる」のだという。
ビルのテナント、企業などがカーボンゼロなどをより意識するようになるにつれて、場所の選択決定を行う際、材料の利用がCO2排出量の点で大きな違いを生む。それがグリーンアルミニウムであるのだというものである。
「この傾向は今後数年間で大幅に増加すると予想される。この速度は基準やインセンティブをどれだけ迅速に変更するか、環境に配慮した製品の販売に対し、社会がどれだけ急速に変化するかに関わっている」とHogna氏は語った。
Hydroは2月半ば、特設ページにてデザイナーのコメントと共にこれからの建築分野の可能性を対談スタイルで語るページも用意しており本気度が伺える。アジア人デザイナーも登場する点も肝になっているであろう。
2021年2月半ば過ぎ、またも衝撃的な映像が飛び込んできた。強風と高波によって、大量のタールが流れ着いたイスラエルの砂浜の映像である。海岸沿いに広がる美しいビーチが油の塊で、160キロの広範囲にわたり覆われた。ビーチに近づかないよう、一般市民に注意喚起すると共に、大規模な清掃活動が行われている。
ギリシャエヴィア島のCharakes海岸,イスラエル海岸に漂着したタールボール
地中海に面したテルアビブの砂浜で、タールボール除去作業を行う兵士たち
大量のタールの漂着理由は未だ調査中であるが、タールは沖合いの船などから流れ出た可能性があるとし、イスラエル政府は流出元の特定を進めている。数千人のボランティアや兵士らが大規模な清掃作業を行い、環境当局はイスラエル史上最悪レベルの環境災害だとしている。
このような社会情勢の中で、環境保全や持続可能性の追求といった地球規模の課題に率先して取り組むなど、グリーンアルミへの価値を認め関心を持つ企業は、おそらくこれからも加速的に増えていくのではないだろうか。
温室効果ガス排出ゼロのアルミニウム製錬技術の開発や、操業用電力の再生可能エネルギーへの転換などのアルミニウムメーカー各社の活動は、さまざまな企業や組織、各国の政府や地域社会とパートナーシップなどの連携による協働も、前述のHogna氏が言及したように社会の変化と連動することとなろう。
(Vol.13へ続く)
A L U C O
流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン(ソムリエ)。