「カーボンゼロ時代のアルミニウム生産 グリーンアルミ、多国籍企業の取り組みVol.10」からの続き
2018年11月19日、食品大手スイスのネスレ、子会社ネスプレッソとリオ・ティントは、ネスプレッソコーヒー用カプセルでASI認証アルミニウムを使用することを発表した。持続可能なアルミニウムを推進する国際NGO、Aluminium Stewardship Initiative（ASI）が管理する、ASI認証アルミニウムは“ネスプレッソ”が世界初となるということで注目された。
このコロナ渦で、人気マシンネスプレッソは、在宅勤務の人々を中心に売れ行きが好調である。2020年12月末に同社が発表した数字では、成長率は一桁代半ばの伸びであるという。他のコービーブランドも、一般家庭の消費者向けをターゲットとし始めたが、グリーンアルミを使用したネスレのカプセルは、今、多くの競合他社に先んじて多くの人々に浸透しているのである。
日本でも、百貨店のキャンペーン商品として店舗に来られない顧客向けに、会報誌にて販売するなど、ある程度的を絞った顧客層に広告を打つなどの工夫が見られた。アメリカでは、Easy Order programを強化し、物流企業UPS提供サービスを利用した全国規模のプログラムを実施した。現在はコーヒーカプセルのリサイクルも容易になっており、ニューヨーク市と連携して、使用済みカプセルを収集する、カーブサイドピックアップも開始している。
これから私たちの普段の生活の中でも、グリーンアルミの名前を聞くようになる日も多くなっていくのではないだろうか。
前述のASIは、アルミニウムのバリューチェーン全体におけるサステナビリティ向上を目的とする国際イニシアチブであるが、2015年Aluminium Stewardship Initiative Performance Standard規格を発表した。
これは、アルミの原料となるボーキサイトの採掘はもちろんのこと、コーヒーカプセルなど一般消費者向け製品の生産や、それらのスクラップ、リサイクルまで、アルミニウムのバリューチェーンのサステナビリティ課題の解決を目指すものである。この規格は、ビジネス規範、方針と管理、透明性、資源管理、温室効果ガス排出、廃液や廃棄物、水、生物多様性、人権、労働者の権利、職業上の健康と安全という11の問題に焦点をあてているという。
28の企業や組織（Nestlé Nespresso SA、Rio Tinto Alcan、BMW Group、Hydro、Fauna & Flora International、Forest Peoples Programme、IndustriALL、Global Union、International Union of Conservation and Nature（IUCN）など）が関わり基準を定め、第3者による認証を通じてシステムが運用される。自動車業界でもBMWに続いてAudi、Jaguar Land Roverなどがこのグリーンアルミの購入を行う流れとなっている。
2021年1月、スウェーデンの人気ベビーカーメーカーであるEmmajungaは、ノルウェーのHydroのグリーンHydro REDUXAを使用したベビーカーを発表した。同社は1925年に設立された老舗ブランドとして欧州で有名であるが、カーボンゼロ時代を見据え、材料への取り組みを行っていくことで、未来を担う子供たちや社会のニーズに合致した方向での製品作りを強化していくという。
ファッショナブル＆機能的＆サスティナブルなストローラー,
1930年代当時の標準モデル。シンプルながら熟練職人の技が必要だった
同2021年1月、HydroのExtruded Solutions 責任者でありPresident & Chief Executive OfficerであるEgil Hogna氏は、「2022年中に低炭素アルミニウムの売上が2倍になり、さらに大きな利益が得られ、使用量の増加が見込まれるだろう」と述べた。
（Vol.12に続く）
出典：
A L U C O
流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン（ソムリエ）。
