カーボンゼロ時代のアルミニウム生産、日本との技術提携Vol.9」からの続き

 

 

 Appleは近年、100%クリーンエネルギーを搭載し、70社以上からのコミットメントがあることを発表した。現在2.7ギガワットの再生可能電力が操業に使用されているという。同社製品の製造に使用される電力からの炭素排出量に対応し、カーボンゼロ原料による“廃棄物ゼロプログラム”が本気度を増している。2015年に立ち上げられたこのゼロプログラムは削減、再利用、リサイクルを通して、埋め立て処理される廃棄物をゼロにし、廃棄物の100%転用を目標とし、サプライヤーを現場でサポートするプログラムである。

 

 

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出典:Apple社HP

 

 

 廃棄物が最も多い最終組み立て施設のプロセスがはじめに着手されたが、2018年にはiPhone、iPad、Mac、Apple Watch、AirPods、HomePodのすべての最終組み立て施設が廃棄物ゼロ認定を取得した。2019年にはプログラムを拡充、Apple TVの最終組み立て施設も加えられた。2020年年末までにエネルギー使用量は20%削減され、Appleのサプライヤーを対象とした廃棄物ゼロプログラムにより、2015年以来130万トンの廃棄物が埋め立て処理されずに転用されたという。今後も世界中で廃棄物ゼロの目標を達成するまで、ほかの施設でも廃棄物を減らす取り組みを続けていくという。

 

 こういった、日常の生活必需品といった商品や社会的に影響力の大きい企業の取り組みは、メーカーにもチャンスとなっている。材料、サプライヤーと提携してエネルギー使用量を削減し、再生可能エネルギーへの切り替えを支援する取り組みは多くの企業で実行されているが、アルミニウムは、100%リサイクル可能な金属として、環境に配慮した材料という視点のみならず、軽さ、薄さなどから、選択されるに有利な“材料”を備えている。

 

 カーボンゼロ時代を背景としたニーズの高まりから、グリーンアルミニウムを本気で売り込むメーカー、リサイクル企業などの動きは世界中で起きているが、よく知る企業の取り組み例として、更に身近なものをいくつか挙げる。

 

 新型コロナウィルス拡大影響として定着した在宅業務需要で、IT関連のハードウェア部品、半導体製造装置部品、真空チャンバーなどの製造部品メーカーが更に好調な状況となっているが、同時に在宅勤務で多くの人が欠かせないものがコーヒーなどの飲料である。

 

 

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 食品大手ネスレは、子会社ネスプレッソのコーヒーマシン「NESPRESSO」のカプセル製造において、水力発電で製錬したグリーン・アルミを使用することとし2018年より実行に移してきた。背景には、省ごみや世界規模の多くの問題を背景としたサスティナビリティに取り組む強化が必要であったことがあろう。

 

 2018年の国際環境NGOのグリーンピース調査によると、ネスレは、コカ・コーラやペプシコに続き、世界で見つかるプラスチックごみの3大製造元であるとされた。この調査は、世界42カ国で9カ月にわたり、世界1,300団体加入のプラスチックごみ削減運動「Break Free From Plastic」と共同で行った。1万人のボランティアの手を借りながら18万7千個ものプラスチックごみを集め製造元を調べた結果、リストのトップに立ったのは飲料最大手コカ・コーラ、2位はペプシコ、3位はネスレだった。この3社だけで世界で見つかったプラスチックごみの14%を占めたという。

 

 更にネスレは、2025年までに、使用する容器の素材をリサイクル材料、あるいは再利用可能な材料へ100%変更することを宣言している。ネスレのグリーンアルミへの切り替えは、数年前に着手したことは、奇しくもこのコロナ渦で英断だったとも言えるであろう。コーヒーを自宅で飲む人々が増加したことで、時代の流れとも新たにマシンを購入し、多様なカプセルを日々の楽しみとする家庭内コーヒードリンカーが増えている。

(Vol.11に続く)

 

出典:https://www.nestle.com/stories/reduce-reuse-recycle

 

 

A L U C O

 流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン(ソムリエ)。