古よりタバコ愛好家は周囲から煙たがれる存在であったようだ。西洋の教養人のなかで、ゲーテ、ハイネは大の煙草嫌いとして有名だ。一方、カント、トルストイ、サッカレー、バッハ、ベートーベンは愛煙家だったそうだ。19世紀を代表する英国ロマン派の革命詩人、ジョージ・ゴードン・バイロン卿もタバキアンとして知られている。(写真はYahoo画像から転載)
バイロン卿は、詩篇『アイランド』の第二章で紫煙の魅力「シガーの讃美」を綴っている。
・・・・・・シガー・・・・・・
榮あるかなタバコ!
東より西へ!
舟子をたのしませ
トルコびとを憩はすもの
モズラムの長椅子に
うれしさはかのオピアムにも
花嫁にもたとふべきか
われスタンブールの
榮華の夢は知らねど
イギリスびとの好みぞ深し
吹管の味、バイプの味
琥珀もて味はば
和ぎてうれしからまし
盛装まばゆき汝が姿こそ
愛を求めて媚ぶるに似たりといふべきか
されどまことの愛を讃ふるは
汝が裸身の美こそ優れり
われにシガーを!
(植原路郎訳)
社交界の寵児として名を馳せたバイロン卿は、恋愛と革命に生きた詩人だった。1824年、ギリシャ独立戦争に身を投じ、36歳の若さで病死する。詩篇『アイランド』はその1年ほど前の作品とされる。
在原次郎
コモディティ・ジャーナリスト。エネルギー資源や鉱物資源、食糧資源といった切り口から国際政治や世界経済の動向にアプローチするほか、コモディティのマーケットにかかわる歴史、人物などにスポットを当てたリサーチを行なっている。『週刊エコノミスト』などに寄稿。