豪注目コバルト企業Cobalt Blue Holdings MIRU独占インタビュー(上)」からの続き

 

 

 豪NSW州西部Broken Hill鉱業地帯にて——より正確に言えば、同社のBroken Hillコバルトプロジェクトは、Broken Hill中心地帯の23km西に位置しているようですが——、世界で初めてのコバルト資源鉱山を開発する企業の存在を第一部では紹介いたしました。その中で今回のコバルト鉱山では、コバルト含有黄鉄鉱から大変高濃度、高純度の硫酸コバルトまで生産する事を説明して戴きました。

 

 同時に副産物として、元素硫黄も大量に生産できること、また鉱山の環境保全に関しても、採掘する鉱石の80%は鉱山へ戻す事、また硫黄と硫酸コバルトを回収後に、酸化第二鉄も将来資源化を検討していることなどが説明されました。

 

 第二部では、この鉱山開発に興味をお持ちの企業には大変重要な会話を同社CEOのJoe Kaderavek氏が詳しく最新情報と投資を希望する企業向けの投資環境のメッセージを伝えて呉れました。

 

 

写真Q5.

MIRUチーム: パートナーシップや契約に関してですが、いただいた資料には三菱や双日などの名前が掲載されています。すでにそれらの企業との間で、貴社のコバルト製品を販売する契約を締結しているということでしょうか?また、他の企業とも何か契約を結んでいらっしゃいますか?

 

Joe Kaderavek氏: 我々のサンプルを希望している企業は15社あります。今後6週間のうちに、中間製品である初のコバルト混合水酸化物と、最初の硫酸コバルトを出荷する予定です。つまり、このプログラムの背景には、通常2~5kg(のサンプル)を希望する15社のパートナーが存在し、そのうち3社が名前を出すことに同意しています。

 

 1社目はLG International社。LG社は何年も前から株主です。他の2社は双日株式会社と三菱商事です。ただ、コバルトのオフテイク契約につては何も話が出ていないため、どこにもコミットされていないという点では、我が社は100パーセントフリーな立場にあります。

 

 対象となっているトン数は、サンプル分だけです。つまり、例えば三菱商事とは、彼らの東京の硫酸チームと取引をしていますが、我々の提携は、三菱に100トンの試験的な硫黄を提供することです。LGとの提携では、5kgのサンプルを提供することになっています。双日との提携では、双日の顧客へ向けたサンプルを提供することになっているので、5kgを5ロット分提供する予定です。

 

 しかし現段階では、商業的にしっかりとしたオフテイク契約はありませんし、ジョイントベンチャーレベルでのプロジェクトパートナーが居るということもありません。ですから、今後3~6ヶ月のうちに、我々のビジネスに大きな変化が起こるのではと考えており、またそうした変化はこのサンプルプログラムから始まるでしょうから、非常に興奮しています。

 

 我々が高品質の硫酸コバルトを作れるのだということをひとたび世界に証明すれば、プロジェクトレベルでのパートナー、そしてオフテイクも獲得できるようになると思います。

 

 

Q6.

MIRU: コバルトは主にバッテリー用途で使用されていますが、他の目的、例えば磁石などにも使われています。貴社のコバルト製品は、バッテリー用途に特化して販売するご予定ですか?あるいは他の用途にも?

 

Kaderavek氏: 世界的に、コバルト生産チェーンでは分岐点があり、その分岐点は水酸化物です。一旦水酸化物を加工すると、金属製のコバルト——例えば金属製のハードフェーシングツール、スーパーアロイなど——か、それ以外を作らなければならないということになります。そしてそのような金属製用途は市場の約40%を占めています。つまり、約40%が金属コバルトというわけです。そして水酸化物から硫酸塩や酸化物を作る場合には、ええ、硫酸塩を作るのであれば、コバルトの化学品である電池向けの硫酸コバルトを作っていることになります。

 

 つまり、我々の工程では水酸化物を作ることができ、また、全世界のコバルトの約70%が水酸化物として取引されていると認識しています。その大部分がコンゴ民主共和国からのもので、非常に取引がしやすい製品です。しかし我々は、それに付加価値をつけ、マージンを確保して、効果的に硫酸塩を作りたいのです。そして付加価値をつけて硫酸塩を作ることで、主に中国のインフラを排除します。我々は、Broken Hillから日本の前駆体メーカーに直接販売することが可能です。田中、日亜、住友といった企業に、中国や他の場所での精製を介することなく、直接販売することができるのです。

 

 

Q7.

MIRU: コバルト採掘はコンゴ共和国が常に独占的な位置を占めてきましたが、中国も強い影響力を持っています。今日は、貴社のような豪州企業の存在を知ることができ、大変嬉しく思っています。Cobalt Blue社はきわめてユニークな存在ですし、豪州と日本は非常に友好的な関係を築いてきました。貴社について知ることができたことは、我々IRUNIVERSE社にとってだけでなく、多くの日本企業にとって良い意味を持つと考えています。

 

Kaderavek氏: 全面的に同意します。付け加えるならば、日本の、あとはある程度韓国もですね——コバルトの経験は、伝統的にきわめて貧弱なものでした。ですから、我が社の冶金学についてのあなた方のご質問は、非常に納得のいくものです。何故なら、我々の商業パートナーからの質問と全く同じものだからです。「あなた方のプロジェクトの成功を望んでいるが、冶金学が強固なものであるとは思えません。冶金学を見せていただけませんか」と。

 

 今年は、今後2ヶ月の間に、パイロットプラントからいくつか小さな製品を生産する予定で、年末までには、さらに大規模な実証プラントの完成を目指しています。そこでは、3,000トンの鉱石の消費から2~3トンの製品の生産を予定しています。これは、コバルトではこれまでに行われたことのない規模の実証です。

 

 

Q8.

MIRU: 豪州の他企業に関しても伺ってよろしいでしょうか。Cobalt Blue社のようなコバルト専門のスタートアップ企業というのは、他にもありますか?豪州での新たなトレンドといった感じなのか、あるいは貴社が独特な立ち位置にいらっしゃるのでしょうか?

 

Kaderavek氏: 我が社が唯一の硫化コバルト鉱体で、他企業は皆ラテライトです。要するに他のサプライヤーは、幾らかのコバルトも持っているニッケル生産者ということです。一次コバルトとしては、世界で2つだけのプロジェクトのうちの1つが我が社です。世界でこれだけコバルトを利用している他プロジェクトは、他にはモロッコ王国だけです。信じられないかもしれませんが。

 

 豪州やカナダには、ニッケル鉱山を所有し、それと共に幾らかの——通常10パーセント、あるいは15パーセントほどの——コバルト副産物を抱える開発者は多数居ます。しかし、ラテライトには注意が必要です。通常、20億ドル以上の大規模な資本予算が必要になるからです。さらに、まだ大規模には実証されていないプロセスでもあります。

 

 

写真Q9.

MIRU: 鉱業、資源などを専門とする日本のメディアとして、豪州企業と日本企業の架け橋になれれば、と思っています。何か日本企業へのメッセージはございますか?

 

Kaderavek氏: オファーに感謝します。私の今日の主な目標は、教育、助言です。豪州から新たな大規模プロジェクトが生まれるのだという市場の理解、投資、商業市場の理解を助けることです。我々は3,500~4,000トンのコバルト金属を効果的に生産し、お話しした通りこれを硫酸塩として販売する予定です。硫酸コバルトにして約17,000トン分ですから、トップ10鉱山のうちの1つに、さらに、硫酸塩の生産者の中では世界で2、3を争う鉱山になるでしょう。他の鉱山は中間体を生産していますので。

 

 我々は、アフリカ地域以外としては唯一の規模の鉱山であり、他の大規模鉱山はすべてアフリカにあります。つまり、商業パートナーや投資家らに向けて、コンゴ共和国の鉱石には“倫理的な代替品”があるのだと助言することは、私の非常に重要な役目なのです。勿論、コンゴからの商品全てが非倫理的・非道徳的なわけでないことは強調しておきます。良い商品も、当然ながらあります。ただし、それでもやはり、我々は新しいプロジェクトです。投資決定までは2年を切っていますが、パートナー企業をその間に見つけ、建設と試運転の段階において協力してもらいたいと思っています。

 

 つまり、2024、2025年には生産を開始し、世界の第一線の電池メーカーらに販売できる商品を作らなくてはなりません。ですから、私が言うべきことは、我々にとってこれは教育の場であり、今日こうしてこの場であなた方にお話しできたことを光栄に思う、ということです。必要があれば、勿論喜んでフォローアップもします。要するに、我が社の存在、そして製品が生産されるということを人々に知らせ、理解してもらうことに尽きるのです。我々は今後6ヶ月のうちに、サンプルプログラムを通じて、多くの見出しを獲得することになると思います。

 

 

Q10.

MIRU: IRUNIVERSE社は、定期的にウェビナーの開催も行なっています。我々は主催者として、通常、日本企業の方々をゲストに招いていますが、もし今後機会があれば、是非貴社をゲストにお招きし、日本企業に、あるいは貴社の将来的な顧客となりうる日本企業に向けて、お話をしていただければと思います。

 

Kaderavek氏: そのような機会があれば、ありがたいです。

 

 

Q11.

MIRU: Joeさんのご経歴についても伺えますか。

 

Kaderavek氏: 私の経歴は、航空エンジニアです。鉱業界の人間としては奇妙な経歴だと思いますが、そのおかげで、材料科学のバックグラウンドが効果的に身についています。現在の自身の役割において、これは重要なことです。

 

 豪州の空軍で数年過ごした後、鉱業界に移り、BHP社、Rio Tinto社などをはじめとする企業で働きました。簡単に言えば、大量の土を動かしてきたわけです。ともすれば滑稽に聞こえるかもしれませんが、土を動かすことは、コストの管理なのです。私の仕事のような資材管理のジレンマですが、800ppm(100万分の800)のコバルトによって事業を生み出そうとしているので、たくさんの土を動かすことになるのです。

 

 これに続いて、ドイツ銀行でアジアの資源部門代表を務め、その後、ヘッジファンドを経営、そこではエネルギー貯蔵やエネルギーシステムの仕事を多く手がけました。

 

 

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Q12.

MIRU: 私たちの方からは以上です。貴社と今後も良い関係を築いていけることを願っています。そちらからは、最後に何か一言いただけますか?

 

Kaderavek氏: あなた方は、資源、採掘プロセスに関してきわめて専門的な機関ですので、先ほども申し上げた、教育、情報共有といった観点から、我々の良いパートナーであると感じています。お困りのことがあればまたいつでもおっしゃってください。今日この場を持てたことを大変嬉しく思っています。ありがとうございました。

 

MIRU: どうもありがとうございました。

 

 

(インタビュアー:棚町裕次、片桐知己 / 訳:A.Crnokrak)