世界最大航空機メーカーBOEINGが語る今後の航空業界② 日本企業との良好な関係」からの続き

 

 

 シェイファー氏は、現在コロナショックで苦境にあえいでいる航空業界の今について

 「コロナショックで、旅客が激減しているが、ここまでの減少は、1950年以降では初めて。しかし、中国だけを見ると、中国の国内線はすでに2016年の水準まで回復している。国内線は、国際線ほどの落ち込みを見せていないが、国際線は9割減と、ほとんど需要が蒸発している状態。各国が入国禁止を行っている現状を見ると、やはり国際線の旅客の回復には数年を要する。」と話す。

 

 業界のセオリーとして、収益性の高い国際線を飛ばして満席にできる航空会社が黒字になりやすいが、世界的な国際旅客の減少という現実が目の前にあると、シェイファー氏は語る。

 

 また、航空会社だけではなく、航空機メーカーも、需要減に陥っている。

 

 航空機製造という業種では、特徴の一つとして、多大な設備投資と、その回収期間が非常に長いという特徴があり、これに航空不況となると、資金繰りが非常に厳しい状態にある。多くの航空機関連企業の資金はすでに底をついており、資金繰りがうまく行っても、2,3年持つかどうかとされている。

 

 その要因の一つとして、航空不況のあおりを受けて、航空会社が機材更新を先延ばしにしている現状があるという。以前は、燃費や整備効率の関連から、新しい航空機を買うという需要があったが、現在は航空機を飛ばす事さえできず、逆にフリート数の削減に走っているメガキャリアも多いため、メーカーであるボーイングを始め、関連企業も苦境と話す。

 

 シェイファー氏は、今後の予測として、国際旅客需要は、2024~2025年になって、ようやく2019年レベルに戻ると予測。同時に力を入れるべき部分として、発展途上国の需要を取り込む重要性を強調した。

 

 また、航空機需要についても、2020~2029年までに1万8,350機、2039年まででは4万8,000機の需要があると予測した。

 

 

気になる「機内」でのコロナ感染について

 また、シェイファー氏は、現在のトレンドである新型コロナウィルスについても語った。

 

 「航空機に乗って、コロナに感染するか?それはほとんどない。」と断言。

 

 ボーイングは、科学的にコロナ感染について調査したところ、紫外線での消毒が有効であり、また室内においては、基本的に飛沫感染が多いことが分かったという。結果、コロナ対策には換気が重要と話す。

 

 この事から、航空機内は、垂直的に気流を循環させており、かなり安全だと話す。ただ、問題は「降りてから」だという。あるいは乗る前。

 

 「各国が、コロナに対しての検査のモデルケースを確立しないと、安全な国際移動が実現できない。検査モデルの確立が、国際旅客の回復には不可欠である。」と話す。

 

 いずれにせよ、コロナ収束にも、旅客需要の回復にもかなりの時間がかかりそうなのは、大方予想通りであったが、世界最大の航空機メーカーが語ると信憑性が増す。

 

 今から約6年前の2015年11月に、国内では三菱重工、そして日本企業の悲願であった、MRJ(現スペースジェット)が初飛行を迎え、大きな話題を巻き起こしたが、その間、航空業界は訪日客の大幅増加で大きな利益を生んだ。そんな中、訪れたコロナという脅威は、瞬く間に航空業界をこれまでにない不況に陥れ、同時に未だスペースジェットは、完成を見ず、その姿を現してはいない。

 

 航空会社では、コロナショックにより多くの人々がその職を離れ、反面、再び空港で飛び交う航空機を待つファンも多い。

 

 航空機を飛ばす航空会社と、作る側のメーカーが今後業界のかじ取りをどのように行うかが注目される。

 

 

(文;金剛たけし)