2021年の非鉄金属相場は総じて堅調に推移しそうである。非鉄金属の代表選手である銅相場についても、そのような動きを想定している。2020年の非鉄相場を振り返ると、年間騰落率は、銅が25.68%、アルミが9.84%、ニッケルが17.85%、亜鉛が20.84%だった。このように、昨年の非鉄相場は軒並み堅調な推移だったといえるだろう。このような強い地合いを支えているのが、景気回復期待に加え、クリーンエネルギーの推進を掲げるバイデン次期米大統領の政策である。世界的に脱炭素の流れは不可逆的であり、この材料がそう簡単に崩れるようなものではないだろう。

 

 電気自動車(EV)や風力発電モーターなどに使用される銅や、車ボディーの軽量化に必要なアルミ、電池向けのニッケルなど非鉄金属の需要は今後着実に増えるだろう。このような「パラダイムシフト」ともいえる時代の大きな変化の時には、相場水準も切り上がることが少なくない。また、非鉄相場に関しては、長期にわたり上昇し続ける「スーパーサイクル」の文脈で説明することができる。各国ともクリーンエネルギーに力を入れる方針であり、その結果、資源の争奪戦が繰り広げられる可能性もある。そうなれば、非鉄相場の上昇に一段と拍車がかかることも想定される。21年以降の非鉄市場の需給および価格動向にはこれまで以上に注目が集まることになるだろう。

 

 

*主要メタルおよび原油・米国株の推移

グラフ

(出所:リフィニティブよりエモリファンドマネジメント作成)

 

 

 銅に関しては、電気自動車(EV)などにおける需要増加の可能性はきわめて高く、世界的なEVの普及に伴い、銅需要も確実に増加していくだろう。銅線の使用量はEVやハイブリッド車のモーター向けに増えることが確実であり、自動車の電装化の加速という将来性を考えると、銅は今後も需要等と価格の高止まりが想定されよう。

 

 

*世界銅需給の推移

グラフ

(出所:リフィニティブよりエモリファンドマネジメント作成)

 

 

*世界銅需給バランスと銅価格の推移

グラフ

(出所:リフィニティブよりエモリファンドマネジメント作成)

 

 

 長期的なテーマに加え、最近では取引所在庫が急減している。LME在庫は、昨年12月末の10万5800トンから、1月末には7万4275トンに減少した。上海先物取引所の在庫は、12月末の8万6679トンから、1月末には6万6565トンに減少している。LME・上海在庫がともに減少したことは、少なからず銅相場を支えたといえる。

 

 

*LMEおよび上海銅在庫と銅価格の推移

グラフ

(出所:リフィニティブよりエモリファンドマネジメント作成)

 

 

 一方、銅現物と3カ月先物のスプレッドは、1月初は16.50ドルのコンタンゴ(順ザヤ)だったが、1月末には7.50ドルのバックワーデーション(逆ザヤ)になっており、需給がある程度ひっ迫している可能性がしてできる。スプレッドのタイト化は、価格を支えるだけでなく、押し上げる効果もある。

 

 

*LMEおよび上海銅在庫と銅価格の推移

グラフ

(出所:リフィニティブよりエモリファンドマネジメント作成)

 

 

 このように、銅相場は堅調に推移してきたが、在庫の減少が相応に影響しているものを思われる。在庫減少の背景には、2月に控える中国の春節を前に、加工品の生産を増やした可能性が指摘できる。また、一部には中国政府が買い上げているとの声も聞かれる。真偽のほどは定かではないが、最近の取引所在庫の急減は何かしらの操作が行われている可能性が指摘できる。

 

 一方、中国工業情報化省が高速大容量規格「5G」のネットワーク整備や電気自動車(EV)向けなどで高まる銅への需要に、銅業界が対応するよう求めたと報じられている。中国は世界最大の銅消費国であり、このような動きも在庫減少の背景にあるのではないかとみられる。新たな政策により、今後の中国の銅需要のさらなる増加が想定され、これが世界的な銅需給のひっ迫につながる可能性がある。電気や建設など幅広く使用される銅の中国の輸入量と生産量は20年に過去最高を記録している。

 

 

*中国の銅輸入量の推移(百万トン)①

グラフ

(出所:リフィニティブ)

 

 

*中国の銅輸入量の推移②(未加工品、トン)

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(出所:リフィニティブ)

 

 

*中国の輸入・保税プレミアムと銅価格の推移

グラフ

(出所:リフィニティブよりエモリファンドマネジメント作成)

 

 

 このような状況もあり、調査会社CRUは昨年、EVに必要な銅需要は30年に世界全体の10%を占めるとの見通しを示している。今後も銅需要の増加への関心が高まりそうである。ちなみに、中国の20年の同輸入量は668万トンと、過去最高となっている。昨年12月は51万2332トンの輸入だった。2月は中国が春節に入ることもあり、実需も相場も動きが悪くなる可能性がある。8000ドルを回復し、この水準を下値に堅調に推移するには時間がかかるかもしれないが、これも時間の問題であろう。

 

 ちなみに、ロイターによるアナリスト向けの調査によると、銅価格が今後数カ月で下落する見通しであることが判明した。世界最大の銅消費国である中国での需要落ち込みと供給増加が背景にあるとしている。20年の銅相場は26%上昇した。中国はインフラ整備に必要な銅への支出を増やし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けていた同国の経済回復につながったとされている。調査対象となったアナリストらは、今年1月の銅相場は約8年ぶり高値を付けたものの、中国が段階的に景気刺激策を打ち切り、負債を圧縮する見通しで、これが下落につながるとみているもようである。

 

 今回の調査に応じたアナリスト29人の予想中央値によると、21年のロンドン金属取引所(LME)の銅平均価格は7600ドルと、直近の水準を下回るとみている。20年は、鉱山からの供給障害やストの可能性に対する懸念高まりが支援材料となっていたが、供給見通しは改善している。一方で、ゴールドマン・サックスは、銅価格の3カ月見通しを8500ドル、6カ月見通しを9000ドル、12カ月見通しを1万ドルと、それぞれ従来予想から引き上げ、強気見通しを示している。通常、銅供給は第1四半期に季節的要因で供給過剰となるが、今年は供給が引き締まっており、過剰分は平年よりかなり少なくなると予想している。

 

 このように、市場における銅相場の見通しは様々ではあるが、基本的には堅調に推移するとみておくのが無難であろう。景気動向や政策面に加え、財政出動や金融緩和が今後も継続される見通しである。これも銅を含む非鉄相場には強い追い風であるといえる。(#2に続く)

 

 

(tetsu emori)
(編集iruniverse)