~米国ウォルマートのCOVID-19ワクチン配送と、アルミ企業による支援Vol.2~」からの続き

 

 コロナウィルスワクチンは超低温輸送が必要な特性上、物流での配送問題を抱えており、冷凍倉庫、配送トラックを含む自社配送設備を持つウォルマートの支援は適任といえるが、ワクチン輸送のためにはマグロ冷凍技術なども生かされる。米国冷凍機器メーカーのサーモキングは、マイナス70度の温度管理を実現するワクチン輸送のための冷凍コンテナの開発を明らかにした。

 

 THERMOKING SUPERFREEZERは、スーパーフリーザーの機能をさらに向上させ、マイナス70度の温度管理が可能となったという。「船社や物流企業により長年使用されてきたが、「マイナス70度」の温度管理を20フィート仕様のリーファーコンテナで実現。コールドチェーンを途切れさせることなく、コンテナ船による海上輸送、鉄道、陸上輸送などのモードでも安定したワクチン輸送を提供できる。また、THERMO KING社製の発電機を併用すればシャーシによる陸上輸送中でもさらなる安定した温度維持が可能だ」という。

 

https://www.ef-international.com/superfreezer-minus70.html

 

 また、冷凍技術と保管のための素材にはアルミニウムが多く使用されており、今後も摂取が完全に行き渡るまで、需要も見込まれるであろう。そして、ワクチンを運ぶ物流企業や航空各社もコールドチェーン(低温物流)の拡充を進めている。

 

 物流大手UPS社は、ドライアイスを1時間あたり1200ポンド(540キロ)分生産できる体制を整えたという。ワクチンの保管や配送に活用することはもちろんであるが、病院や診療所など摂取の際にも提供できるようにするといい、マイナス20~80度に対応する冷凍庫も確保した。

 

 同じく物流大手フェデックス社は5000以上の配送施設や8万の車両、670機の飛行機などを用意し、配送支援を行なっている。

 

 航空大手では、ユナイテッド航空が、米連邦航空局(FAA)の支援によってファイザー製薬の工場のあるベルギーから、イリノイ州のシカゴへとワクチンを大量輸送したとのことである。

 

 そしてアメリカン航空も、南部フロリダ州から南米への試験飛行をしているという。

 

 多くの航空会社が経済的打撃に喘ぐ中でも、ワクチン輸送のニーズに応え、対応を行っていることは、日本や他の国々の物流企業や航空会社においても、小売と連携するなどの取り組みのみならず、追随する動きがでてくるであろう。

 

 なお、日本においては1月27日、ワクチン9千万回分の国内生産予定が発表された。前述の通り、非常に温度管理が難しい特性上、物流の問題を解決するためには、合理的解決法との判断があったためもあろう。英国アストラゼネカが日本政府への供給で合意していたが、医薬品メーカーのJCRファーマ株式会社(本社兵庫県芦屋市)が9千万回分の生産を始める方向で調整しているという。

 

 合意した1億2千万回分のうち75%を占めるが、国内生産を行い、ワクチンの安定供給につなげるという。JCRファーマ株式会社は、神戸市の工場でアストラゼネカのワクチンの原液を製造する。これまでワクチンの生産実績はないものの、生産に必要な関連技術を持ち、バイオ技術に特化して治療薬開発を行う中堅製薬企業である。

 

 アストラゼネカから製造技術移管を受け生産体制を整え、保管や配送では第一三共などと協力するという。今後、生産はもとより、配送に係る保管や物流における新しい技術などの取り組みにも注力していく必要があるであろう。

 

 

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                                                          JCRファーマ本社(兵庫県芦屋市)

 

 

出典:

 ・https://www.ef-international.com/wp-content/uploads/2020/12/7d369750e1cca05e446bb442ce2680e0.pdf

 ・https://www.jp.thermoking.com/

 ・https://www.jcrpharm.co.jp/

 

 

A L U C O

 流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン(ソムリエ)。