Rio Tinto社のElysisは、世界初のアルミ精錬プロセスであり、リオティントとアルコアという世界的なアルミ業界のリーダー企業の画期的なパートナーシップによって生まれた。アルコア、リオティント、カナダ政府、ケベック州政府は、合計約1億8,800万ドル(CAD)(日本円にして154億円超)もの投資を行い、“ELYSIS”を設立し、2024年の商業化を目指している。

 

 2018年5月10日、アルコアはリオティントとの合弁事業のElysisを発表、酸素を放出して温室効果ガスを排除する世界初の革新的なアルミ製錬技術を進め、商品化すると発表した。

 

 翌年の2019年には、S&P Global Platts Global Metals Awards 2019にて、“Breakthrough Solution of the Year”を受賞した。

 

 その他同時に、Gloabal Metals Awards Winnersの一社とし、Rio Tinto Aluminium社は、①Metals Company of the Year②Nonferrous Industry Leadership Awardも2019年にダブル受賞している。

 

 

ELYSIS –世界初、無炭素製錬技術と製造プロセス

Youtube:https://youtu.be/7y8jE5V70Lc

 

 また、この事業が斬新な取り組みとされるもう一つの重要な理由は、Apple社、そしてカナダ政府、ケベックの政府が3.5%株式投資していることもあろう。アルミニウム業界で最も重要な革新が多く含まれているのである。そして、130年以上にわたってアルミニウムは炭素を排出し製造されてきたが、ゼロとなることは大きな意味を持っている。

 

 カナダのケベック州サグネイにElysis研究開発センターが建設され、技術者らがアルミニウム製錬プロセスの温室効果ガスの排出を排除する特許技術を進歩させているが、アルコアとリオティントの合弁会社が特許を取得して商品化することのみならず、具体的に、Apple社が商品へ使用すると明言したことは非常に大きなインパクトがあるであろう。アルミニウムは当然ながら、多くのApple製品の重要な素材である。2019年にも下記のように、企業の将来目標や指針を示す重要なレポートでも方針とともに示された。

 

 

図

Apple HP:2019 Environmental Responsibility Report (Page19)

 

 

 当時Apple社CEOティム・クックは下記のように語り、意欲を示した。

 

「アップルは、Elysisの様なテクノロジーの進歩に常に取り組んでいます。

 地球に良く、何世代にもわたって地球を保護するのに役立つ技術革新のこの野心的な新しいプロジェクトの一員となることを誇りに思います。

 そして将来的にAppleの製品に使用することを楽しみにしています」

 

 

写真

オレゴン州モンタギュー風力発電所:200メガワットプロジェクト

Apple社のPrinevilleデータセンターに電力を供給 (Apple HP)

 

 

 水力発電で生産するグリーンアルミを強くアピールするリオティントは、Apple社の方針と連動した形で、今後も製錬技術の開発と商品化を進めていくであろう。2024年までに市場に提供される予定としている。

 

 しかし、カナダの国を挙げての国策としてのアルミニウム製造の長期的な取り組みは、今に始まったことではない。

 

 30数年前から日本のアルミニウムメーカーとの技術とともに切磋琢磨してきた歴史もある。日本の技術者がカナダの企業で共同して作業をするなどの取り組みもあったということも忘れてはならない。長期的なカーボンゼロ時代をアルミニウムが革新的技術で邁進していく時代の流れの中で、日本は蓄積や強み、チャンスがあると言えるのではないだろうか。

 

 続けて、グリーンアルミの開発へ邁進するリオティントなどアルミ企業の取り組みなどについて見ていく。

(カーボンゼロ時代のアルミニウム生産Vol.4に続く)

 

出典:

 ・www.elysis.com

 ・https://www.spglobal.com/platts/global-metals-awards/winners/2019

 ・https://www.alcoa.com/sustainability/en/elysis

 

 

A L U C O

 流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン(ソムリエ)。