~再びの欧州ロックダウン&在宅勤務とアルミニウム需要Vol.1~」からの続き

 

 新型コロナウィルスの影響を受けた在宅業務の更なる広がりにより、IT関連のハードウェア部品需要が世界的に拡大していることから、半導体製造部品メーカーの業績が好調である。しかし、熾烈な競争を勝ち抜くためにメーカーは多くの工夫が必要となっている。多くの受注に応えるのみならず、これまでの製造法を変更するメーカーも出てきているという。

 

 例えばスラブ(圧延用鋳塊)は、直方体の形状の圧延用鋳塊の名称で、加熱して高温度で板状に圧延する。スラブはビレットと同じく、成分を調整され半連続鋳造法でつくられており、その重量は目的及び圧延設備の仕様などに応じて決められる(一般に、厚さ200~600mm程度、約2~28トンの重量)。コロナ以前は、それらのスラブ鋳塊より切り出し加工していたものを、現在は、難しい材質の鋳物・砂型鋳造にて加工で勝負し、良い業績を上げているメーカーが出てきているという。スピードと技術で勝負しようというものである。

 

 

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スラブ

 

 

 また、パソコンや携帯電話などの情報機器、家電、オーディオ・テレビ・ビデオなどのAV機器まで、あらゆる電気製品に不可欠な電子部品として、アルミ電解コンデンサが使用されている。アルミ電解コンデンサは、誘電体として酸化アルミニウムが使われる。この酸化膜は耐圧が高く実質的な厚みを極めて薄くでき、箔表面をエッチングすることにより実効面積を、見かけ上の面積を数10~数100倍にできるために、大きな静電容量を実現できる構造である。

 

 アルミ電解コンデンサは小型大容量であり、電源の平滑、電源ラインのバイパスやデカップリング、低周波カップリング(DCカット)など、電子機器内の多くの場所で汎用的に使われる。メーカーでは、電源入力平滑用や制御回路用など、アプリケーションに最適な特性を考えてコンデンサを選択する。この酸化皮膜の厚さを調整することで、使用目的に応じて静電容量を自由に変えられるのが、他のコンデンサにないアルミ電解コンデンサの大きな特徴という。

 

 

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 情報機器の伸びで、アルミ電解コンデンサの日本での生産はここ10年で急拡大した。そしてこの新型コロナウィルスの影響下で、需要拡大傾向が続いているのではあるが、そのような中、三菱アルミニウムに動きがありそうである。三菱アルミニウムは中国で自動車の熱交換器向けにアルミ部材を生産する工場を持つこととなる。

 

 2020年4月、中国の自動車部品メーカー、江蘇亜太軽合金科技と共同で新工場を建設し、9月に合弁会社を設立すると発表した。新型コロナウイルスの影響で中国でも自動車生産は落ち込んでいるが、需要回復が続いていた。江蘇亜太軽合金科技の2019年12月期の売上高は約35億元(約540億円)。バンパーや車体の構造部材などを生産する計画だという。他、グループ会社事業の再編についても検討がされており、三菱アルミは、今はまだオフレコの情報のみであるが、アルミ電解コンデンサはくより撤退する可能性があるという。

 

 多くのメーカーが、多くの新しい需要への適合と将来を見据えた変更を迫られている。他のメーカーも生き残りのため、品質、コスト、納期にて以前にも増して切磋琢磨する状況が続いている。

 

出典:https://www.nichicon.co.jp/products/denshi_toku.html

 

 

A L U C O

 流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン(ソムリエ)。