2021年が、2回目の緊急事態宣言という形で始まりました。我々国民が肌で感じる変化として、飲食店の20時閉店要請が身近に感じますね。同じくして航空業界も、多少なりとも回復していた運航数が、再度減便という形で、業界としての苦境を示しているようです。

 

 昨年、航空大手2社が、相次いで業績発表時に、「来期は黒字を目指す」「更なるコスト削減を目指す」「思い切った事業転換、構造改革を目指す」と繰り返し発言しています。

 

 素朴に感じたのは、航空機を飛ばせずに、どうやって黒字に持っていくのか?という疑問でした。

 

 しかし、昨年大手2社が行ってきた、自社社員を守るための「ある奇策」が報道され始めた時、私はある一つの「可能性」を考察しました。

 

 それは、「一時的な航空会社の派遣業転換」です。

 

 

現在も進む自社社員の「派遣」

 先日、ある大手新聞社のweb版の記事に、かつての私の同僚が載っていました。記事の内容は、本来の航空業の業務を離れ、空港近くの工場の作業員として派遣され、業務に就いているという内容でした。

 

 

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 また、成田空港のおひざ元、成田市では、毎年大勢の参拝客でにぎわう成田山新勝寺に、ANAやJALの地上職員が、奉仕員や巫女として「出向契約」を結び、現地で参拝客にお守りの販売を行っているという記事もありました。

 

 確実に進む「派遣」「出向」ですが、これが航空機を飛ばせない今の航空会社を救う事になると感じます。

 

 すでに昨年、家電量販大手ノジマがANAHDからの社員出向受け入れを発表し、大きな話題になりましたが、ノジマに留まらず、各地域で減便によって余剰した人員を別の企業等に出向させているようです。2010年のJAL破たんのように、大規模なリストラをしない背景には、需要が回復してからの事を想定しているようですが、残念ながら回復の兆候は見られず、IATAの予想では2024年までこの状況が続くと発表されているようです。

 

https://www.iata.org/

 

 そうなると、航空業はどうなるのか?飛行機を飛ばして、モノ、人を運ぶ行為ができなくなれば、必然的にその存在価値は失われ、市場も縮小していくでしょう。

 

 派遣業には、とにかく従業員の頭数が必要とされているようですが、ANAで4万人、JALで3万人規模の人材がいます。これほどの人材がいれば、事業として成り立つかと思われます。現在は、派遣した従業員の給料の一部を、派遣先に「肩代わり」してもらうシステムだそうですが、いずれこれを労働力として派遣先へ派遣しその対価として、報酬を取り、収入として計上する形になる可能性を秘めています。

 

 ひとえに航空業と言っても、ケータリング、グランドスタッフ、地上支援、整備など、その職は多岐にわたり、一つとして同じものはありませんので、適材適所により、人材の少ない業界に社員を派遣することも可能でしょう。例えば、空港におけるグランドハンドリングでは、1日千個を超える貨物、手荷物を航空機に搭載する業務についているので、慢性的な人手不足である運送業、倉庫業にはもって来いな気がします。

 

 

派遣業へ業態変更するには「社員の了承」と「航空業へ復帰」が条件か?

 コロナショック以前は、業界間で人材の偏在が非常に激しかったようにも思えました。これにより、人手不足の業界が多く発生していましたが、コロナショックで企業活動が制限されたことにより、人余りが顕著になり、結果として、人手不足だった業界へ人材が流れることは、私自身は良いことのように思えます。

 

 大手2社に限らず、航空会社が航空機を飛ばせない中、自社の生き残りをかけるには、今抱える人材を生かす他ありません。

 

 可能性の一つとして、派遣業への業態変更を挙げましたが、これに必要なのは社員への理解と説明でしょう。日本の航空業界は、多くの日本人の憧れでもあります。その代表例が、キャビンクルー、パイロットです。ただ現実を見れば、航空機が飛ばない今、彼らの仕事はなく、この人員を今後どうするかが注目されます。

 

 また、これはかつて航空業界にいた人間の視点としての見解ですが、この業界の方々は、少なからず自分の仕事にプライドを持つ方々が多く、いわば「プライドが高め」の人が多いように感じます。そうなるとプライドをかけて取り組んできた仕事が無くなってしまった今、その彼らに別の企業、仕事についてくれと言って素直に従うかどうかにかかっている気もします。

 

 これらの人材が、航空の仕事ができないならば辞める、といった発言をしたならば、それこそ会社を畳むことに繋がります。生き残るためには、まず、「社員への理解を得る事」そして、需要が戻ったあかつきには、「必ず元の職場に戻す」ことを、企業側が約束する事が必要になると考えます。

 

 

(文:金剛たけし)