2021年1月10日

 新型コロナウイルスの感染拡大で石油需要が低迷するなか、米エネルギー情報局(EIA)によると、米国では製油所の精製能力の低下、製油所の閉鎖が相次ぎ、2020年9月1日現在、米国内における精製能力が日量1,840万バレルとなり、16年5月以来の水準まで低下していることが判明した。コロナワクチンの接種が始まるなど、経済回復とともに石油需要も徐々に回復すると見られるものの、21年前半は低迷が続くとの見通しを示している。(画像はイメージ)

 

 脱炭素化時代の到来を受けて、環境関連規制の強化、燃料消費の停滞、国際市場での競争激化、2021年から24年にかけて中国や中東などで稼働する予定の多くの巨大石油精製プロジェクトなどを勘案すると、今後の石油業界を取り巻く環境は厳しいと言わざるを得ない。米石油精製業界では今年後半以降に悪影響が出てくると予想されている。

 

 こうした状況を踏まえ、石油各社は製油所の閉鎖、統合、転換などの時期を早め、新たな取り組みに着手している。製油所の統合では、PBF Energy(本社:ニュージャージー州パーシッパニー)が東海岸の事業で合理化を進める。同社は2019年にPhiladelphia Energy Solutions(フィラデルフィア州)が運営する製油所を閉鎖済みだ。

 

 他方、米国では製油所を再生可能ディーゼル製造設備に転換する検討を計画する企業も多い。カリフォルニア州では、再生可能ディーゼルを市場に販売することで州の低炭素燃料基準(Low Carbon Fuel Standard)に基づくクレジットの取得が可能となる。また、米連邦政府の再生可能燃料基準(Renewable Fuel Standard)に基づくコンプライアンスクレジットを販売することもできるようになる。具体的な動きとして、Phillips 66(本社:テキサス州ヒューストン)はカリフォルニア州のRodeo製油所について再生可能ディーゼルを主とする世界最大の再生可能燃料プラントに転換するプロジェクトを推進している。

 

 Marathon Petroleum(本社:オハイオ州フィンドレー)は、Dickinson製油所(ノースダコタ州)に加えて、Martinez製油所(カリフォルニア州)を再生可能ディーゼル製造設備に転換する計画を検討している。

 

 このほか、HollyFrontier(本社:テキサス州ダラス)がCheyenne製油所(ワイオミング州)を再生可能燃料製造設備にする計画を明らかにしている。米国では今後、製油所の設備転換の動きが増えていくとの見方が一般的なようだ。

 

(IRuniverse)