豪州連邦政府は先日、産業省による最新四半期資源エネルギー報告書を公開した。これによれば、中国との摩擦による石炭貿易の制限を背景に、今会計年度(2020-2021)の火力石炭の輸出予測を900万トン下方修正し1億9,900万トンへ、輸出収益予測は50億ドル減少させることとなったとのこと。昨年度(2019-2020)の輸出量は2億1,300万トン、輸出収益は200億ドル。また、鉄鋼の原料となる原料炭metallurgical coalでは、輸出量は2019-2020年度から800万トン下がり1億6,900万トンへ、輸出収益は、120億下がり220億ドルとなることが予想されている(全て豪ドル)。

 

*全データはこちらから↓

 https://publications.industry.gov.au/publications/resourcesandenergyquarterlydecember2020/index.html

 

 

 ただし注意したいのは、政府によるこの報告書は、12月8日までのデータのみを使用している点で、つまり、最新の中国での貿易ストライキは考慮していないものと考えられるそう。これを考慮に入れた場合には、上記の予想はさらに押し下げられる可能性があると報道されている。

 

 報告書によれば、中国への火力石炭輸出は、今年9月から10月にかけて過去10年で最も低い水準を記録したとのこと。「石炭市場は流動的な状態にあり、新型コロナウイルスとは全く異なる問題に対処している。石炭の出荷(主に豪州産のもの)は中国の港で遅延に直面している」と書かれている。

 

 また、石炭自体の価格は、原料炭に関しては下落を見せており、この回復は、中国政府の政策やシグナルに大きく左右されるだろうとされている。一方、火力石炭スポット価格は、主要輸出国の減産と需要の増加を背景に、2020年12月四半期は安定していたとのことで、全四半期の底値からは回復を見せている。

 

 豪州政府は今回、中国が石炭輸入制限をこのまま維持すれば、豪州石炭生産者は生産量削減を開始せざるを得なくなる可能性があるとの見解を示している。中国は豪州にとって、火力石炭や原料炭に関して、第2位の買い手であるそう。

 

 さらにロイター通信によれば、中国では今週月曜、“豪州以外の国からであれば入港制限(clearance restrictions)なしで石炭を輸入できる、という承認が発電所に与えられた”との報道がなされたとのこと。中国外務省の報道官はその後、状況を把握できていないが、所轄当局は豪州からの輸入品に関連する措置を採用してきたと述べている。

 

 なお、石炭以外に目を向けると、新型コロナウイルスによるパンデミックが未だ終わりを見せず、新たな波が襲来しているにもかかわらず、エネルギーおよび資源商品輸出の全体的な見通しは9月の報告書から改善したと述べられている。

 

 

(A. Crnokrak)

 

 

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 豪州シドニー在住。翻訳・執筆のご依頼、シドニーにて簡単な通訳が必要な際などには、是非お声がけください→MIRUの「お問い合わせ」フォーム又はお電話でお問い合わせください。

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